「特別支援が必要な子どもの高等学校進学の話」(山内康彦)

十八歳以降を見据えた進路指導の大切さ

「特別支援が必要な子どもの
   高等学校進学の話」(山内康彦)
 WAVE出版

特別支援が必要な子どもは、
決してできない子どもでは
ありません。
「定型発達の子どもに比べて、
身につくのに時間がかかる」
だけです。
だからこそ、
将来の見通しをもち、
早期からの適切な療育を
家庭と関係機関が
連携・協力していく…。

特別支援学級の生徒の進路に関わり、
これまでモヤモヤしていたことが
多々ありました。
中学校卒業以降の「進路」についてです。
特別支援学級で学ぶ場合、
成績がつかないケースが多く、
高校進学時の調査書の得点が低くなり、
不利になります。
かといって支援学校進学では、
高卒の資格が得られず、
就職に困難を来します。
どうするのが一番いいのか?
はっきりとわからないままに
過ごしてきましたが、
本書を読んで方向性が見えてきました。
素敵な一冊です。

〔本書の構成〕
はじめに
序章 不登校を含めた
 特別支援教育の現状と課題
第1章 たくさんの方が
 将来の進路について悩んでいる
第2章 なぜ高等学校卒業なのか
第3章 不登校や特別支援が
 必要な子どもが進学できる高等学校
第4章 通信制サポート高校の実践例
第5章 高等学校卒業後の世界を考える
終章 一八歳以降の出口を見すえて、
 これから何をするとよいのか
巻末資料
 高校へ進学した特別支援が
  必要な子どもの「保護者からの声」

本書の味わいどころ①
特別支援が必要な子どもの本質

そもそも特別支援が必要な子どもとは
どんな子どもなのか?
本書はその基本的な部分から
詳しく説明しています。
「知的障害」のある子ども、そして
「知的障害」はない(あるいは少ない)
ものの自閉症スペクトラムや
アスペルガー症候群など、
「情緒障害」を抱えている子ども、
その状態を踏まえて、
基本的な考え方を説明しています。

さらに、特別支援が必要な子どもの数が
増加している現状にも触れ、その
中学校卒業における「進路」の問題点を
丁寧に解説しています。
特別支援学級生徒の保護者が感じている
不安についても紹介され、
この国の抱えている教育の問題点の
一つの側面を見ることができるのです。
この、特別支援が必要な子どもの本質と
現状を学ぶことこそ、
本書の第一の味わいどころなのです。
しっかりと味わいましょう。

本書の味わいどころ②
十八歳以降を見据えた進路指導

私は中学校に勤務していますが、
多くの教員が
「高校進学後の進路」を考えずに
進路指導を行っている現状があります。
考えていても、
現在は本人と家庭の意思を
尊重する時代ですので、
そこに助言を加えることは
かなり少なくなったはずです。
しかし高校進学で
人生が完結するはずがなく、
高校卒業後の進路を見据えた
進路指導が必要であるはずです。
特別支援が必要な子どもにとっては
なおさらです。
本書は、その点についても
詳しく説明しています。

支援学校卒業後の就職の状況、
支援学校のメリット・デメリット、
高校卒業資格のないことが就職する上で
大きな不利となっている現状、
そうした一つ一つのことを
丁寧に取り上げ、
わかりやすく解説しているのです。
その上で、全国にいくつか現れた
特別支援教育に対応した高校について
紹介しているのです。この、
特別支援が必要な子どもについての
十八歳以降を見据えた
進路指導の大切さを知ることこそ、
本書の第二の
味わいどころとなるのです。
じっくりと味わいましょう。

本書の味わいどころ③
中学卒業後の学ぶ手段への提言

問題は、現状の高等学校(全日制)と
支援学校との間に、
限られた選択肢しかないことが
問題だと気づかされます。
その子の特質に配慮した学びを
実現できる高校、
中学校の学び直しが可能となる高校、
自分のペースで学ぶことのできる高校、
こうした高校が
必要となってきているのです。
この、中学校卒業後における
学びの手段の多様化の必要性に
気づくことこそ、本書の最大の
味わいどころとなっているのです。
たっぷりと味わいましょう。

さて、そうした高校が
登場してきてはいるものの、
全国的に見ても
わずかしか存在しないこと、
そのほとんどが私立であることが
さらなる問題点として
浮かび上がります。
私の住む県の状況を見ても、
そうした高校の必要性については
まったく無視されている状態です。
スポーツの得意な生徒の
県外流出が50人を超えたことは
問題として認識されても、
その何倍かの子どもが不適応で
高校を中退している現状は、
「個人の問題」としてしか
とらえられていないのです。
教育の問題の、
いろいろな面を考えるきっかけとなる
一冊です。
ぜひご賞味ください。

(2025.7.9)

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