
ASDと非ASDの異文化コミュニケーションの必要性
「はじめてまなぶ自閉スペクトラム症」
(本田秀夫)金剛出版
どんな人でも
ASD的な側面と非ASD的な側面を
併せもっていて、
その濃さ(程度)の割合が
人によって違う、と
考えてほしい。
ASDの当事者と非ASDの人たちが
共存する社会では、いわば
「異文化コミュニケーション」が
必要である…。
「おわりに」から抜粋しました。
ASDとは自閉スペクトラム症
(Autism Spectrum Disorder)。
特別支援教育の現場では、
このASDと診断される生徒が
急増しています。
最新の本(本書刊行:25年6月)を読んで
理解を深めたいと思い、
購入してみました。
〔本書の構成〕
はじめに
第I部 診断・アセスメント
自閉スペクトラム症とは?
パーソナリティ?それとも発達?
「自閉」という言葉と概念の由来と変遷
自閉スペクトラム症の診断と鑑別
自閉スペクトラムにおける「こだわり」
発達障害と感情
自閉スペクトラム症の
臨床における包括的アセスメント
「発達」も「知的」も
総合的に見る視点を!
第II部 支援の実践へ
支援の考え方
鶏が先か、卵が先か
発達障害のある
高校生・大学生が抱える問題
成人期の自閉スペクトラムを
どう理解し支援するか
認知行動療法が効いたのか?
自閉スペクトラム症に対する
地域支援システム
自閉スペクトラム症と家族支援
発達障害臨床の現場から
おわりに
本書の味わいどころ①
自閉スペクトラム症研究の最前線を知る
やはり新しい知見に富んだ
内容となっていました。
しかも学術的な部分の記述は
極力抑えられ、
著者が診断したASDの人たちの
特性の現れ方や
社会生活における適応状況等の紹介に
力点が置かれています。そのため、
一般の人間が読んでも十分に理解できる
内容となっているのです。
注目すべきは、ASDの特性と
それに起因する「二次障害」を
明確に区別して論じていることです。
ASD特性よりも、学齢期において
定型発達の子どもと
同じように振る舞うよう
強制されることによって生じる
「二次障害」こそ、
対処すべき課題であることが
わかります。
こうした自閉スペクトラム症研究の
最前線の成果を知ることこそ、
本書の第一の味わいどころなのです。
しっかりと味わいましょう。
本書の味わいどころ②
自閉スペクトラム症の特性の長所を知る
先日、青木正三氏の
「ぼくらの中の発達障害」を
取り上げました。
一般的には「短所」として
とらえられがちの発達障害を、
「長所」という視点から
解説しているのが新鮮でしたが、
本書も同じスタンスで語られています。
ASDの特性を持ちながら
社会に適応している人たちの例を
紹介しながら、
ASD特性が「武器」となることを
説明しています。
本書の著者・本田秀夫氏も、
自らがASD特性の
持ち主であることを認め、それを
自身の長所ととらえているのです。
これが大きな説得力となっています。
ASD特性を持つ人が
本書を読むことにより、
自らの特性の中で、
社会生活上の困難の原因となる部分と、
他の人のまねのできない
「長所」となり得る部分を、
はっきりと認識し、
自らをコントロールできるきっかけを
つかめるのではないかと思うのです。
こうした自閉スペクトラム症の特性の
長所を正しく認識することこそ、
本書の第二の
味わいどころとなるのです。
じっくりと味わいましょう。
本書の味わいどころ③
異文化コミュニケーションの必要を知る
さらに、著者は
ASDの人と定型発達の人とは、
それぞれ異なる文化の中で
生きていることの認識が大切だと
説いています
(この点についても青木氏の
「ぼくらの」でも述べられている)。
ASDの人が定型発達の人たちの
気持ちを理解できないのと同様に、
定型発達の人はASDの人の気持ちを
理解できないのです。
お互いに歩み寄り、
異文化理解を進めることが大切だと
気づかされます。
「おわりに」の中で述べられている
著者の提言は重要です。
「当事者も支援者も、
ASD的/非ASD的のどちらの文化も
可能な限り理解している
バイリンガルを目指すのである。
どちらの要素も
それぞれうまく取り入れながら、
ASDの人たちが
社会の中で生活しやすくなるための
支援ができるよう、
勉強を続けていただきたい」。
こうしたASDと非ASDの
異文化コミュニケーションの
必要性を理解し、
その実践の姿を考えることこそ、
本書の最大の
味わいどころとなっているのです。
たっぷりと味わいましょう。
私が教職に就いたあたりにはまだ
「自閉スペクトラム症」なる言葉や概念は
教育現場にはありませんでした。
次第に「発達障害」の考え方が広がり、
ADHDやアスペルガー症候群、そして
「自閉症スペクトラム」なる
症状を持つ子どもたちが
入学するようになりました。
最近では特別支援学級の情緒障害学級に
入学してくる生徒のほとんどが
「自閉スペクトラム症」の
診断を受けている状態
(私の受け持った範囲では)です。
本書を多くの人に
読んでいただきたいと思います。
(2025.7.14)
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