
100万年という「短さ」に凝縮された大地の壮大な歴史
「日本列島100万年史」
(山崎晴雄・久保純子)
講談社ブルーバックス
私たちが目にしている
ありふれた地形も、
さまざまな作用や力が働いて
作られてきたものなのです。
その成り立ちを知ることで、
過去にどんなことが
起きていたのかを知ると同時に、
将来どんなことが起きる
可能性があるのかという…。
日本列島は
いつどのようにしてできたのか?
そして自分の住む地域の大地は
いつどのようにしてできたのか?
誰しもが抱く疑問です。
それに丁寧に答えてくれる本は
なかなか見つかりませんでしたが、
ようやく出会うことができました。
本書「日本列島100万年史」です。
〔本書の構成〕
はじめに
第1章 日本列島は
どのようにして形作られたか
第2章 北海道
第3章 東北
第4章 関東
第5章 中部
第6章 近畿
第7章 中国・四国
第8章 九州
おわりに/参考文献
本書の味わいどころ①
自分の住む地域の過去がわかる
本書の構成を
見ていただければわかるように、
第1章では総論を紹介し、
第2章以降は、北海道から九州までの
それぞれの地域の大地の歴史について
述べられています。
日本列島の特定の地域の
大地の歴史について書かれた本は
なかなか見当たらないため、
その点で本書は貴重です。
私の住む東北地方は第3章。
奥羽山脈の成り立ちやその火山の特徴、
太平洋側のリアス式海岸の
過去と未来など、
面白く読むことができました。
日本全域を取り上げているため、
東北地方の記述は
わずか二十数頁のみであり、
自分の地域だけ
深く知りたいという方には不向きです。
しかし他の地域の章を
読んで比較することにより、
東北地方の大地の歴史の特徴が
よりよくわかる
しくみとなっているのです。
郷土の人間社会の歴史書は
いくつも存在するのでしょうが、
大地の歴史が書かれた本は
決して多くはありません。
しかも一般の人間が読んでも
理解可能なレベルまで
用語の使用を押さえ込んであります。
さらに、将来起こりうる災害についても
言及されていて、
私たちの生活にも
役立つ構成となっているのです。
この、
自分の住む地域の大地の歴史を知り、
未来に役立てようとする
視点を得ることこそ、
第一の味わいどころなのです。
しっかりと味わいましょう。
本書の味わいどころ②
「地学」から学びがつながる構成
自然科学の専門書の多くは、
その専門性を売り物にするあまり、
それ以外の分野との関わりが
希薄になりがちです。
本書は異なります。
地学をベースにしながら、
それが他の学問や私たちの生活と
どのように結びついているかまで
解説しているのです。
北海道と本州の分離によって生じた
両者の動植物相の相違、
縄文時代の海面上昇と
三内丸山遺跡との関連、
古代日本の近畿地方において
遷都が繰り返された理由等々、
読み手の興味がさらに広がるような
仕掛けがなされているのです。
この、「地学」から学びを始め、
他の領域へと
学びを広げていくことこそ、
本書の第二の
味わいどころとなるのです。
じっくりと味わいましょう。
本書の味わいどころ③
「100万年」という適度な「短さ」
「100万年」というと、
気の遠くなるような長い時間ですが、
地球の歴史46億年からすると
わずか0.02%に過ぎません。
日本列島が形成されたのは、
地球史の中ではきわめて
最近ということなのでしょう。
地球規模のダイナミックな
地殻変動について書かれた
自然科学新書本は
数多く出版されているのですが、
日本列島限定、
そして直近100万年間限定で書かれた
本は決して多くはありません。
新生代第四紀の後半100万年という、
日本列島の歴史を語るには
ちょうどよい「短さ」に
焦点を当てているのが本書の特徴です。
それにしてもその「100万年」の間に、
実に多彩な地学的現象が
起きていたことに驚かされます。
氷期と間氷期を繰り返す間に、
日本列島の姿形は大きく変化を遂げて
現在に至っているのです。
「100万年」という適度な「短さ」に
凝縮された、
日本列島の大地の壮大な歴史こそ、
本書の最大の
味わいどころとなっているのです。
たっぷりと味わいましょう。
本書はもちろん
入門書の域を出てはいません。
広く取り上げている代わりに
深くはないのです。
それでいいのです。
いきなり専門性の高い本を読んでも
消化不良を起こすばかりです。
本書は入門書としては
親切であり適切である良書です。
ぜひご賞味ください。
(2025.7.21)
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