
人体という宇宙を、写真で「読む」
「新 細胞を読む」(山科正平)
講談社ブルーバックス
これまでの電子顕微鏡の成果に、
先端的顕微鏡が暴き出した
知見をも加えて、
細胞が私たちのからだの中で
どのように活躍しているのか、
もう一度考え直してみたい。
最新の目を通して
細胞のかたちを楽しみ、
それが生み出す働きを…。
ブルーバックスの素敵な一冊です。
初読以来、折に触れてページをめくって
楽しんでいたのですが、
このたび一通り再読してみました。
やはり面白さ満点です。
〔本書の構成〕
はじめに
第1部 細胞の世界へようこそ
第2部 細胞とその部品
第3部 細胞の生と死
第4部 活動する細胞の姿
4-1 血球に見る一匹狼の細胞群
4-2 運動器官の細胞
4-3 神経の働きを見る
4-4 消化器官の細胞たち
4-5 ホルモンをつくる細胞
4-6 呼吸器官の細胞群
4-7 生殖細胞が繋ぐ生命の絆
4-8 廃棄物の処理工場
4-9 情報をキャッチするアンテナ
本書の味わいどころ①
精細な写真が語るミクロな人体
本書の特徴は、第一に
その豊富に掲載された写真にあります。
といっても中学校の教科書に載っている
光学顕微鏡写真ではありません。
電子顕微鏡、そして
ニューマイクロスコープと呼ばれる
最新顕微鏡の詳細な画像なのです。
それが「挿絵」というレベルを超えて、
見開きにしたとき、
片側一頁がまるごと写真。
まさに本書は写真が主体の
自然科学新書なのです。
これまで巨視的表面的な見方しか
できなかった人体を、
細胞レベルのミクロの視点で
解析しているのです。
強い説得力を持つとともに、
それらは美しささえ感じさせます。
しかも「姿」を見せるだけにとどまらず、
細胞どうしの「関わり」や、
細胞の「はたらき」など、
動的な瞬間を見事に切り取っている
画像も豊富に提示されているのです。
この、精細な写真群が語りかけてくる
人体のミクロな姿こそ、
本書の第一の味わいどころなのです。
しっかりと味わいましょう。
本書の味わいどころ②
写真以上に読ませる筆者の文章
しかし本書はそれらの写真群を
「見る」ための一冊ではありません。
表題どおり、「読む」ことに主眼を置いた
新書なのです。
添えられた写真が素晴らしくとも、
文章が専門的すぎると、
まったく理解できないまま
終わってしまいます。
その点、本書の文章は、
一般の読み手を十分意識して
編まれています。
いくつかの例外はあるものの、
見開き一頁で一つの内容を取り上げ、
簡潔にまとめています。
その文章も専門用語を
極力避けるとともに、平易な文章で
読み手が理解しやすいように
配慮がなされています。
この、写真以上に
読ませる筆者のわかりやすい文章こそ、
本書の第二の
味わいどころとなるのです。
じっくりと味わいましょう。
本書の味わいどころ③
系統性を生かしつつ面白さ優先
自然科学は系統性が大切です。
しかしそれを優先してしまうと
難しさが先に立ち、
一般の読み手が投げ出してしまう
可能性が出てきます。
本書は系統性を生かしつつも
面白さを優先させた
構成となっています。
特に本書の七割近い分量を占める
第4部は、面白いものから
並べたような順番が素敵です。
また、筆者・山科正平氏の文体は、
平易なだけでなく軽妙です。
自然科学の新書を読んでいることを
忘れさせます。
読み手はエッセイかコラムを
読んでいる錯覚に陥るのです
(コラムは別に9篇挿入されている)。
たぶんこの方の講義は
絶対に面白いはずです。
この、系統性を生かしつつも
面白さを最優先させた構成こそ、
本書の第三の
味わいどころとなっているのです。
たっぷりと味わいましょう。
本書の刊行は2006年。
20年近くが経過してしまいました。
おそらくこの20年の間にも
顕微鏡技術は
格段の進化を遂げているはずです。
「新 新 細胞を読む」の出版を
待ち望んでいるのですが、
その気配はなさそうです。
まずは本書をたっぷり味わいましょう。
(2025.9.29)
〔関連記事:ブルーバックス自然科学〕
「細胞発見物語」(山科正平)



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