「父と娘の法入門」(大村敦志)

親子で語り合う「法」のあれこれ

「父と娘の法入門」(大村敦志)
 岩波ジュニア新書

「私たちが知っている
「法」っていうと,
日本国憲法とかかな」
「憲法は中学校や高校で
習うんだけど,
誰もが知っていると言ったのは,
憲法のことじゃないんだ.
たとえば,物を買ったらお金を
払わなければならないとか,
そんなことは….」

「法」は難しい。
一般的にはそうしたイメージが
浸透しています。
法律には一般人が普通に使う言語とは
乖離した用語が多数登場し、
言い回しも複雑で
簡単には理解できないからでしょう。
また、昨今は裁判官が
不可解な判決を出すことが多いことも
それに拍車をかけているはずです。
そんな難しい「法」について、
中高生にもわかりやすく
書かれてあるのが岩波ジュニア新書
一冊である本書です。

〔本書の構成〕
読者のみなさんに…
前夜 中高生のための法教育
   犬も歩けば法にあたる
第1夜 名前があるのは何のため?
    我輩は猫である
第2夜 落し物か捨て子か
    まいごのこねこちゃん
第3夜 親子であるには?親子であれば?
    ぞうさん
第4夜 飼主の死後の動物
    忠犬ハチ公
第5夜 動物を殺してはいけない?
    ねこふんじゃった
第6夜 動物の取引
    ある晴れた昼下がり
第7夜 迷惑を防ぐ飼主の責任
    101匹わんちゃん
第8夜 野生動物を捕獲する
    森のくまさん
第9夜 児童の虐待・動物の愛護
    ねこを紙袋に押し込んで
第10夜 飼主の移動の自由
    盲導犬クイール
第11夜 コンパニオン・アニマルって何?
    とっとこハム太郎
第12夜 動物と共存する
    アマミノクロウサギ
あとがき/読書案内/引用条文

本書の味わいどころ①
親子で語り合う法のあれこれ

とかく難しい「法」を、
わかりやすくかみ砕くための
工夫の一つが「親子の語り合い」です。
父 日本人であるというのは
  どういうことかな?
娘 日本国籍を持っているということ?
というように、
全編、父娘のトーク形式で
構成されているのです。
父は娘が理解できるように
身近な話題から始め、
平易な言葉で語りかける。
それに対して
娘は率直な疑問をぶつける。
その繰り返しの中から
見事に「法」の本質に迫っているのです。
まさに表題どおりの
「父と娘の法入門」となっているのです。
この、親子で法のあれこれを
語り合うというスタイルこそ、
本書の第一の味わいどころなのです。
しっかりと味わいましょう。

本書の味わいどころ②
動物の話題から入る法の基礎

法は多岐にわたるため、そのすべてを
取り上げることは不可能です。
本書は動物が絡む話題に限定して、
「法」について語り合っているのです。
第1夜では、動物の名前から始まり、
戸籍の問題や犬・猫の登録に関する
法律に切り込んでいます。
第2夜では、迷い犬・迷い猫の扱いから、
所有権や親子の血縁・養子縁組などに
関する法律へと話題を広げています。
第12夜まですべてこの形で
「法」を解説しているのです。
これなら中高生が読んでも
取っ付きやすく感じるはずです。
この、動物の話題から法の話題へと
移行するわかりやすいアプローチこそ、
本書の第二の
味わいどころとなるのです。
じっくりと味わいましょう。

本書の味わいどころ③
余談と楽しい挿絵、新聞記事

親子の会話という
体裁をとっているため、
その話題はあちこちに飛びながら
核心に迫っていきます。
そのために余談が多いのは
好き嫌いが分かれるかもしれません。
しかしその余談の面白さが
中高生を上手に引きつけて
いくのではないかと思うのです。
また、中高生の読み手にとっては、
その中から本質を読み取る力を磨く
教材としても機能していくはずです。

同時に、所々に入れられた挿し絵も
楽しい限りです。
筆者の娘(執筆当時高校生だった)が
担当したイラストであり、
「法」の話の堅くなりがちな雰囲気を
うまく和らげています。
このイラストを眺めているだけでも
楽しい気分に浸ることができます。
さらに、話題のもととなる事件の
新聞記事を随所に配置されてある点も
素敵です。
本書には、
こうした読み手の理解を助ける工夫が
いくつもなされてあるのです。
この、父娘のトーク、
身近な動物の話題に加えての、
余談と楽しい挿し絵、
そして新聞記事の相乗効果こそ、
本書の第三の
味わいどころとなっているのです。
たっぷりと味わいましょう。

若い方に限らず、「法」は難しい、
あるいは、「法」は自分には関係ない、
と考えている方は
多いのではないでしょうか。
しかし「法」は私たちを守るために
存在するのです。
その「法」が
正しく機能しているかどうか、
正しく運用されているかどうか、
立法府や政治・行政を厳しく
監視していなければならないのです。
もっともっと
「法」に関心を持つ必要があるのです。
「法」を正しく理解するために、
ぜひご賞味ください。

(2025.11.12)

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