
防災の視点とボランティアの精神の継承と
「高校生、災害と向き合う」
(諏訪清二)岩波ジュニア新書
環境防災課設置の
構想が出されたのは
二〇〇〇年三月です。それから
二年間の準備期間を経て、
二〇〇二年四月に
一期生を迎え入れました。
震災から七年目のことです。
この七年間、兵庫県では、
”あらたな防災教育”と呼ばれる
防災…。
岩波ジュニア新書に、またしても
素敵な一冊を見つけてしまいました。
表題どおり、
高校生たちが災害ボランティアとして
被災地におもむき、
被災者たちと真摯に向き合い、
誠実に活動するようすが
記されています。
その姿に感動するとともに、
「防災」そして
「ボランティア」ということについて
深く考えさせられました。
〔本書の構成〕
はじめに
1 被災地で
2 夏休みに
3 全国で唯一の環境防災科
4 こんなボランティアをやってきた
5 ボランティアの経験から
6 活動はこれからも続く
本書の味わいどころ①
災害と向き合う高校生の姿に感動
ともすれば被災者に
「してあげる」になりがちな
災害ボランティア。
しかし本書に記されている高校生たちは
「してあげる」のではなく「向き合う」。
その姿が新鮮であるとともに
すがすがしさを感じさせます。
日本で唯一の「環境防災科」なる学科が
設置されている舞子高等学校。
「1 被災地で」「2 夏休みに」では、
2011年の東日本大震災での
被災地における高校生たちの奮闘ぶりが
描かれています。
うまくいったことばかりでは
ありません。
未曾有の災害で打ちのめされている
人々を前にしての「悩み」や「無力感」、
遺体を発見したときの「驚き」と「恐怖」、
そうしたものまで
包み隠さず記されているのです。
そしてそこから高校生たちが
ボランティアとしての気づきを得て、
一回り成長するようすも
丁寧に綴られているのです。
この、被災地と向き合い、
成長していく高校生の姿こそ、
本書の第一の味わいどころなのです。
しっかりと味わいましょう。
本書の味わいどころ②
ともに悩み考える教員の姿に感銘
爽やかなのは
高校生の姿だけではありません。
それを支える教員たちの
支援のしかたや考え方も素敵です。
「環境防災科」における学問として
生徒に「教える」部分は
多々あるのでしょう。
しかしボランティア活動においては
生徒とともに考えるという
スタンスをとっているのです。
ボランティアとして訪問した先で
冷たい言葉を
投げかけられたときの対応や
訪問先で聞かされた
辛い話を抱える困難さへの対処など、
明確な答えのないものが
いくつもあるのです。
それらに対して、生徒とともに考え、
生徒とともに成長していこうとする
教師たちの姿が
そこここに記されているのです。
この、ともに悩み考える教員たちの
姿勢こそ、本書の第二の
味わいどころとなるのです。
じっくりと味わいましょう。
本書の味わいどころ③
これからの「防災」について考える
本書は、
そうした高校生と教員のボランティアの
実践記録だけではありません。
これからの防災の在り方について考える
視点を提供しています。
津波ジオラマを使って
津波の恐ろしさと
迅速な避難行動の大切さを
周知する活動、
小学校での防災教育の実施、
国際交流における
防災の在り方の情報伝達や共有、
そうした災害前の活動が、
これからの防災を考える
手がかりとなるはずです。
とくに第3章に記されている
「防災教育の四つの分野」
(「ハザード」「災害対応」
「社会背景」「語り継ぎ」)は
示唆に富んでいます。
詳しくはぜひ読んで
確かめていただきたいと思います。
この、これからの
「防災」について考える視点こそ、
本書の第三の
味わいどころとなっているのです。
たっぷりと味わいましょう。
災害をなくすことはできないのですが、
その被害を
小さくすることはできるのです。
災害列島である日本に住んでいる以上、
防災の視点と
ボランティアの精神の継承は
必要不可欠なのです。
私たちも
舞子高校環境防災科の高校生とともに
学んでいきましょう。
ぜひご一読を。
(2025.12.15)
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