
博物館対応コンパクト仕様のハンディ恐竜図鑑
「カラー版 恐竜たちの地球」
(冨田幸光)岩波新書
一九七〇年代に「恐竜温血説」が
ひろがりはじめると
状況は一変した。
若い研究者が精力的に
研究をおしすすめた結果、
尾を広げ、
活動的に歩きまわる一方で、
鳥類に似て子育てをしたり、
群れで季節移動をしたりする、
新しい恐竜像が…。
恐竜と聞くと気持ちがわくわくします。
できれば目で楽しみたい。
難しい話は苦手です
(一応、理科教師なのですが)。
図鑑は根が張るし、
重いのでなかなか手を出せません。
その点、
新書本なら安価でハンディで素敵です。
岩波新書の一冊です。
〔本書の構成〕
はじめに
1 恐竜を研究する
2 三畳紀の恐竜たち
1 獣脚亜目
2 古竜脚下目
3 ジュラ紀の恐竜たち
1 ジュラ紀の獣脚類
2 竜脚下目
3 鳥脚亜目
4 剣竜下目
4 白亜紀の恐竜たち
1 白亜紀の獣脚類
2 白亜紀の鳥脚類
3 よろい竜下目
4 堅頭竜下目
5 角竜下目
あとがき
本書の味わいどころ①
化石や復元骨格の豊富な写真
恐竜に関する本なら図鑑を中心に、
子ども向けから大人用まで、
それこそ枚挙にいとまがないほど
これまで出版されてきました。
その多くは豊富な図解で
恐竜の魅力を私たちに伝えてくれます。
本書もまた新書本ながら、
しっかりと読み手の目を
楽しませてくれるのです。
約140点もの化石や復元骨格の写真が
掲載されています。
復元図こそほとんどないものの、
これだけの写真を載せた新書本には、
なかなか
お目にかかることはできません。
ぱらぱらと
ページをめくっているだけで、
博物館に出かけたような気分に
浸ることができます。
恐竜本は、「読む」よりも先に
「観る」ことが大切です。
この、化石や復元骨格の豊富な写真の
視覚効果こそ、
本書の第一の味わいどころなのです。
しっかりと味わいましょう。
本書の味わいどころ②
分類法による恐竜世界の俯瞰
なぜこれだけの骨格写真が
掲載されているのか?
それは本書が恐竜という古生物を、
「分類」をもとに
解説しようとしているからです。
本書はまず、目次の次に見開きで
「獣脚類」と「竜脚類」のそれぞれの
「骨」の名前を一覧にしています
(例えば背骨であれば「頸椎」「動椎」
「仙椎」「尾椎」というように)。
そして以後の本編では、
恐竜それぞれの骨がどのように変化し、
それがどのような進化を呼び起こし、
そのためにどのような分類になるのか、
じっくりと説明がなされてあります。
骨の変化、そしてそれに伴う
進化の過程と分類が、
骨を中心に解説されているのです。
しかし本書は決して
骨の形状による古典的分類で説明が
なされているわけではありません。
当然のこととして分岐分類法による
系統的な分類を基本にしています。
全体の章立ては、
恐竜の時代である中生代を
「三畳紀」「ジュラ紀」「白亜紀」と三分し、
それぞれで
分岐分類による分類をもとに、
恐竜の世界が語られていくのです。
ともすれば私たちは、
ティラノサウルスやトリケラトプス、
プテラノドンといった、
超メジャーな恐竜をもとに
その世界を
イメージしてしまうのですが、
それでは不十分なのです。
どこからが恐竜で、
それはどこまでなのか、
分類と進化から恐竜の全体像を
とらえていくべきなのだということに
気づかされます。
この、分類法によって俯瞰される
恐竜世界こそ、本書の第二の
味わいどころとなるのです。
じっくりと味わいましょう。
本書の味わいどころ③
博物館対応のコンパクト仕様
そしてこれはまだ私も味わっていない
「味わいどころ」なのですが、
本書の特徴は新書本ゆえの
コンパクトさにあるのです。
手ぶらで博物館に出かけるのも
決して悪くはないのですが、
専門書を片手にしての博物館巡りは
楽しいの一言に尽きます。
重い図鑑を持って出かけるのは
困難でも、このサイズなら可能です。
博物館で学びを深める。
そのための最適な一冊なのです。
この、博物館対応の
コンパクト仕様こそ、
本書の隠れた味わいどころなのです。
たっぷりと味わいましょう。
残念ながら地方在住かつ
要介護家族同居の私にとって、
本書片手の博物館巡りは
夢のまた夢といった状況です。
かつて上野の国立科学博物館を
毎年のように訪れていたのですが、
しばらくは無理そうです。
本書を眺めながら
思いを馳せる毎日です。
(2026.1.5)
〔絶版中の本書に代わるものは…〕
本書の刊行は1999年。
すでに四半世紀が経過しています。
当然絶版中です。
しかし本書に代わるものが
なかなか見当たらないのが
残念なところです。
いくつか本書に近い内容で
面白そうなものを
挙げておきたいと思います。
①大人の恐竜図鑑 北村雄一
(ちくま新書)
新書本サイズで
2018年刊行の最新版です。
しかし骨格写真ではなく
著者自身のイラストが主なのだとか。
それも面白そうです。
②恐竜
(講談社の動く図鑑MOVE mini)
子ども向けですが、ハンディタイプで、
こちらも博物館巡りに
適しているようです。
2019年出版。
③改訂版 あの恐竜どこにいた?
地図で見る恐竜のくらし図鑑
(創元社)
まったくハンディではないのですが、
図鑑としては
これがもっとも引きつけられます。
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