「ソウルで学ぼう」(水野俊平)

子どもたちがまず知っておくべき国は韓国

「ソウルで学ぼう」(水野俊平)
 岩波ジュニア新書

近くて遠い国・韓国。
子どもたちがまず知っておくべき国は、
アメリカでもヨーロッパでもなく、
韓国だと私は思います。
遺伝子的には
極めて近い民族でありながら、
常に摩擦を繰り返してきた
歴史を持つ日韓両国。
でも、隣国どうし
円滑な外交ができないようでは、
未来に向けて
世界が一つになろうとするとき、
その流れに両国は
取り残されてしまうと思うのです。

ぎくしゃくした
政府間のやりとりとは別に、
若者どうしの交流は決して
険悪にはなっていないと思うのです。
まずは子どもたちに
この1冊を読んでもらい、
韓国への理解を
深めて欲しいと思います。

「第1章 まず大づかみに知っておこう」
ここでは韓国の地理や歴史、
気候風土、文化について、
小見出しどおり「大づかみ」に
書かれてあります。
ここだけでも知らなかったことが
たくさんありました。
韓国の人口は約4700万人
(2005年調査と
ややデータが古いのですが)、
日本の約半分。
首都ソウルの人口は約980万人、
日本以上に人口が
首都一極集中化しているのです。

「第2章 中心部を歩いてみよう」
ここからは現在の
ソウル市のようすです。
第2章では
中心部に位置する大通り、
鍾路・太平路・南大門路を歩いて
散策できる歴史的建造物や商業施設、
文化スポットなどを紹介しています。

「第3章 王宮を訪ねよう」
この章では、
ソウル市内にある
5つの王宮について記されています。
王宮というのは
日本の皇居にあたります。
王宮の建造物を写真で見る限り、
やはり日本の文化と韓国の文化は
極めて近い位置に
あることがうかがえます。

「第4章 博物館で学ぼう」
ソウル市内の博物館の
詳細が載せられています。
かなり小規模のものまで
しっかり掲載されています。

「第5章 韓国文化を体験しよう」
現在の韓国文化(やや若者文化に
偏ってはいますが)について
述べられています。
ここで取り上げられている
食文化を考えると、
日本とはやや隔たりを感じます。
辛みを主体とした味付けは、
日本食には少ないですから。

高校生への修学旅行前の
ガイドとして書かれたという本書。
旅行ガイドブックの方が
ビジュアルでわかりやすいのですが、
読んで理解することも大切です。
そして「大づかみ」で書かれてある
本書を出発点に、
韓国理解への学習を
深めることができればと思います。

※中高生の異文化理解の第一歩として
 十分に薦められる一冊なのですが、
 以下の点で
 やや残念な部分が見られます。
①白黒写真がふんだんに盛り込まれ、
 視覚的な理解は助けられるのですが、
 参照のための地図がなく、
 文章を読んで、地理を頭で
 再現しなければならない点。
②韓国の「紹介」に終始し、
 韓国文化への「リスペクトの視点」が
 十分でない点。

※それでもこうした中高校生向けの
 安価な書物が
 他に見当たらないため、
 本書の価値は高いと言えます。

※私の地域では、
 数年前まで高校生の
 韓国修学旅行が盛んでしたが、
 2014年のフェリー転覆事故を
 きっかけに激減しました。
 その後の日韓の対立により、
 韓国修学旅行を実施している高校は
 果たしてどれだけあるのでしょうか。
 悲しくなります。

(2019.10.25)

Kibeom KimによるPixabayからの画像

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