「麒麟」(谷崎潤一郎)
「徳」の人・中島、「色」の人・谷崎 「麒麟」(谷崎潤一郎) (「潤一郎ラビリンスⅠ初期短編集」) 中公文庫 南子は七人の美女で 孔子をもてなす。 美女たちは幽妙な香を ふんだんに焚きしめ、 辛辣な酒を次々に杯に注ぎ、 ...
「徳」の人・中島、「色」の人・谷崎 「麒麟」(谷崎潤一郎) (「潤一郎ラビリンスⅠ初期短編集」) 中公文庫 南子は七人の美女で 孔子をもてなす。 美女たちは幽妙な香を ふんだんに焚きしめ、 辛辣な酒を次々に杯に注ぎ、 ...
徳の人・孔子、義の人・子路 「弟子」(中島敦) (「李陵・山月記」)新潮文庫 衛の君主・霊は、 南子夫人に籠絡され、 国政を誤っている。 孔子の一行はこの衛の国に入る。 孔子は霊公に謁したが、 南子には赴かなかった。 腹...
末弟は何の象徴なのか? 「放蕩息子の帰宅」(ジッド/若林真訳) (「百年文庫078 贖」)ポプラ社 さて、第2章以降、ジッドの創作部分は どうなっているのか。 実は聖書では兄と弟の二人なのですが、 本作品は、さらに下の弟...
弱者こそ救われるべき 「放蕩息子の帰宅」(ジッド/若林真訳) (「百年文庫078 贖」)ポプラ社 ある富豪に息子がいた。弟は父に財産の生前贈与を懇願し、それを持って家出をする。放蕩の限りをつくして財産を失った弟は、数年後...
これは明治の時代だけの事情なのか 「谷中村滅亡史」(荒畑寒村) 岩波文庫 前回取り上げた本書ですが、 読み終わって感じることは、 「これは明治の時代だけの 事情なのか」という疑いであり、 そのことが頭から離れません。 ...
私が知っていたことはほんの表面だけだった 「谷中村滅亡史」(荒畑寒村) 岩波文庫 著者荒畑寒村の名前は知らなくても、本書に登場する「足尾鉱毒事件」と田中正造の名前は多くの方が知っていると思います。前者は我が国最初の公害...
誰にも真似のできない素晴らしい生き方 「なんにもないけどやってみた」 (栗山さやか)岩波ジュニア新書 前回は本書について、 発展途上国の現状を最前線で捉えた 報告書としての一面から 取り上げました。 実はそれ以上に、 著...
私の心に強く反省を求めて迫ってきました 「なんにもないけどやってみた」 (栗山さやか)岩波ジュニア新書 やせ細って ひからびた状態になっている女の子、 床ずれで皮膚が爛れてしまい、 おしりの部分は骨まで見えている女性、 ...
読み返したとき、じわりと広がる悲しみ 「朽助のいる谷間」(井伏鱒二) (「山椒魚」)新潮文庫 「私」は、幼い頃自分の子守役だった朽助老人の近況を手紙で知る。彼の小さな家や土地が、その地に建造されるダムの水底に沈むことにな...
全然違いました。 「子熊の夜遊び」(井伏鱒二) (「白鳥の歌/貝の音」)講談社文芸文庫 子熊は郷の者五名とともに、 豪族の殉死者として 生き埋めにされるべく 捕らえられる。 酔い潰れて死んだと 思われていた子熊は、 生き...