まさに岩波ジュニア新書入門といえる一冊
「道は自分で切りひらく」(広岡勲)
岩波ジュニア新書
![](https://www.xn--u9jxf6af7c4b7e3b2kra6gh4851yok3b.club/wp-content/uploads/2019/12/2020.01.05-1.jpg)
子どもたちの読書を、
ラノベ小説だけで
終わらせたくないと考えています。
現代作家から明治の文豪までの
純文学としての小説、
そして詩や短歌、俳句、随筆、評論、
さまざまなジャンルに
広げさせたいのです。
私が積極的に紹介したいと
考えているのが岩波ジュニア新書です。
ジュニアと銘打っているものの、
その内容は大人が読んでも十分
勉強に値するものばかりです。
子どもたちをここに導きたいのです。
とは言っても、
読書経験の浅い中学校1年生であれば、
ジュニア新書でさえも
まだまだ敷居が高いと感じるでしょう。
そこで本書の登場です。
本書はまさに岩波ジュニア新書入門とも
言える一冊なのです。
大リーガーたちが
どのような努力を重ねて成功したのか、
わかりやすくかつ
ドラマチックに描かれています。
ちょうど小説と新書本の
中間のような内容ですので、
読書に慣れていない中学生でも
十分に読みこなせるでしょう。
1 「ホームランを捨てた」から始まった
松井秀喜が
2003年の大リーグ移籍直後の不振を
乗り越えるようす、
2004年の二年目の重圧を
はねのける過程、
そして2006年のあの左手首骨折という
大怪我とその後のカムバックまでを
取材しています。
どこまでもストイックな
松井選手の生き方が魅力的です。
2 挑戦するということ
日本選手初となる大リーグ挑戦の
扉を自らこじ開けた野茂、
日本人野手として
初めて実績を上げたイチロー、
二人の挑戦が記されています。
日本人大リーガーの
珍しくない昨今ですが、
彼ら二人がいたからこそ
後に続く選手が続々と登場したのが
よくわかります。
3 障害なんてへっちゃらだ
かつて大リーグで活躍した
隻腕投手・ジム・アボット。
差別や好奇な視線の中にあって、
実力だけがものを言う
大リーグで活躍できた
彼の折れることのない情熱と
力強い生き方が紹介されています。
4 偏見を乗り越えて
黒人初の大リーガーとなった
ジャッキー・ロビンソン選手の
奮闘が描かれています。
人種差別が根強く広がっていた
1950年代に、
「仕返しをしない」勇気を持って
差別に耐え抜き、静かに戦い続けた
ジャッキー選手の生き方は、
子どもたちが人種差別の問題を
考えるきっかけとなるはずです。
5 オリジナリティがいちばん
誰にも真似できない技術や
プレー・スタイルを持つ
リベラ投手、
シェフィールド選手、
フランコ選手、
ウェイクフィールド投手の4人を
取り上げています。
ナンバー1である以上に
オンリー1であることの
素晴らしさが伝わってきます。
6 われわれはあきらめない!
高校教師から大リーガーとなった
ジム・モリス投手の
ドラマが紹介されています。
彼のあきらめない姿勢は
もちろん素晴らしいのですが、
それ以上に高校教師を経験し、
教える立場に立ったことによって
「思考能力はすぐれ、それによって
技術も上がっていった」という一節が
印象的です。
7 がまんから生まれた指導論
松井がヤンキース在籍時の
監督・ジョー・トーリの
指導論についてです。
権力を持ったオーナーと
プライドの高い選手との
板挟みになることの多い
監督という立場で、
感情を表に出すことのない
リーダーシップには
学ぶところが多いと感じました。
短い章に区切りながら、
それぞれのテーマのもとに
大リーガーのストーリーを
紹介していきます。
これなら読書経験の浅い野球少年たちも
すんなり入ることができるはずです。
ここからスタートして、
岩波ジュニア新書に親しみ、
将来的には大人向けの新書本も
読みこなせようになれば理想的です。
さあ、子どもたちに
本書を薦めてみましょう。
えっ、女の子や
野球に興味関心がない子どもには
どうすればいいかって?…それは…。
(2020.12.5)
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