「旭山動物園12の物語」(浜なつ子)②

マネジメントに生かせる要素が盛りだくさん

「旭山動物園12の物語」(浜なつ子)
 角川ソフィア文庫

前回取り上げた本書には、
もう一つ読みどころがあります。
それは経営再生の哲学です。
マネジメントに生かせる要素が
盛りだくさんなのです。
ジリ貧の動物園を、
日本有数の観客動員数を記録する
観光スポットまで押し上げた
スタッフの経営哲学は、
読み応えがありました。
私などは、自分の所属する
教育現場と照らし合わせて
読んでしまいました。
私が普段考えていることと
重なる部分が多かったからです。
集約すると、以下の3点です。

①常識にとらわれず、
 一度原点に立ち戻り、
 そこから考える。

私たちはともすれば
常識にとらわれすぎてしまいます。
動物園は普通こうでしょ、
学校は普通こうでしょ、
○○は普通こうでしょ、からは
なにも新しいものは
生まれないと思うのです。
迷ったら原点に立ち返るべきです。
動物園って何のためにあるの?
学校って何のためにあるの?
○○って何のためにあるの?
そこからリスタートすると、
見えてくることが
たくさんあるはずです。

②立場の上下なく、
 組織全体で議論する風土をつくる。

トップダウンが必要なことも
確かにあります。
しかしボトムアップでなければ
生まれないアイディアも
多いと思うのです。
最前線で戦っている職員の声が、
しっかりと生かさる
組織でなければならないと思うのです。
何を言ってもむだ、という組織は
いずれ滅び去ります。

③誰のためのものか、
 視点を他者に移動させる。

旭山動物園はあくまでも動物の立場、
次に見に来る人の立場を
考えているのです。
職員が楽をできるように、
という視点ではありません。
学校もまた、
生徒の立場に立って
考えたいと思うのです。
ともすれば、教育委員会や市町村、
県や文科省の方ばかり
気にしている管理職がたくさんいます。
自分たちのやることは、
誰のためになっているのか。
常にそうした問いを
自らに発していきたいものです。

こういう職場で働きたい。
本当にそう思います。
誇りを持って働くというのは
こういうことではないかと思います。

タイトルから想像すると、
「わくわく動物ランド」のような
イメージなのですが、
書かれている内容は
骨太な自然観と経営哲学です。
それでいて中学生でも読める
丁寧な文章表現です。
小説から一歩進んで、
評論・随筆に読み進める中学生を
育てるための一冊といえます。

(2020.3.5)

acworksさんによる写真ACからの写真 ※画像は旭山動物園とは関係ありません。

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