「銀漢の賦」(葉室麟)

普段は読まない時代物、でも…。

「銀漢の賦」(葉室麟)文春文庫

寛政期、小藩月ヶ瀬藩の郡方・
日下部源五は、娘婿から
家老・松浦将監の
暗殺を持ちかけられる。
源五と将監は
かつて同じ剣術道場で学んだ
幼なじみであったが、
ある出来事を境に絶交していた。
二人が袂を分かった事件とは
一体…。

私は普段、こうした時代物は
めったに読みません。
でも買ってしまいました
(6年前のことですが)。それはなぜか。
当時放送していたNHKのドラマ
「風の峠」を観てしまったからです。
テレビ自体をほとんど観ない私です。
たまたま晩酌の時間が遅くなったときに
目にしたドラマでした。
面白くて
ついついはまってしまったのです。

原作である本書を読んでみました。
ドラマは全6回のうち
3回しか観ていなかったので、
頭の中でストーリーが
つながっていなかったのですが、
読み終えて
全貌を知ることができました。

かなり構成のしっかりしている
筋立てです。
幼少期、壮年期、そして老年期と
三つの時代に渡って、
源五・将監、そして
二人の友である十蔵との
親交と運命的なすれ違いが
綿密に描かれています。

何よりも
物語の展開のテンポが絶妙です。
これだけの複雑な構成を
無理なく読ませてしまうスピード感。
下手をするとこの手の時代物は
長編大河ロマン的に、
だらだらとした展開に陥ることが
よくあるのですが、
ほどよくまとまっています。

それでいて、
決して文章が軽くなってはいません。
現代の売れ筋小説は
文章が軽々しいものばかりですが、
本作にはそうした要素は見られません。
その結果、
重厚かつ爽快感のある
作品になっているのです。
時代物を見直してしまいました。
時代物一般がそうなのか、
この作家だけの特徴なのか、
時代物に疎い私にはわかりませんが。

作家・葉室麟を私はそのときまで
名前すら知りませんでした。
本作以外にも、
当時映画で話題となった
「蜩ノ記」も著しています。
そちらの映画も観ていませんが、
本作同様に重厚な作品のようです。

最後に。
ドラマでは大物俳優の中に混じって
桜庭ななみが光っていました。
とてもいい味を出してました。
好みというわけではないのですけど。
…嘘ではありません。
彼女に惹かれて見始めたわけでは、
決してありません…。

※当時も新鮮でしたが、
 桜庭ななみさんは現在も素敵です。
 やはり私の好みです。

(2021.4.22)

Jörg PeterによるPixabayからの画像

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