「原子力がひらく世紀 第3版」(日本原子力学会編)

2011年3月10日第3版発行

「原子力がひらく世紀 第3版」
(日本原子力学会編)

今日取り上げる本は、
これまでとはちょっと毛色が違います。
まず、
文庫本でも新書本でもありません。
26cm×18cmで、立派な大型本です。
そして一般書店では
販売していない本です。
しかもすでに絶版になっていて
入手困難な一冊です。

なぜそんな本を取り上げるか?
それは本書以外に、
原子力について科学的に正確に、
かつわかりやすく書かれた本が
見当たらないからです。
2段組全400ページのボリュームに、
写真やイラストを含めた
詳細な資料も満載され、
それが定価2000円(2011年当時)。
私も隅から隅まで読んだわけでは
ありませんが、必要に応じて
参考書的に活用しています。

内容は以下の通りです。
第1章 核分裂の発見
    そしてエネルギー源へ
第2章 地球環境問題と原子力
第3章 新エネルギーと原子力
第4章 放射線の性質と防護
第5章 放射線の
    いろいろな分野への応用
第6章 原子力発電所と安全確保
第7章 核燃料とリサイクル
第8章 放射性廃棄物の処理処分
第9章 原子力利用と開発の現状
第10章 原子力科学技術の将来

もちろん、日本原子力学会は
原子力開発を
推し進める立場でしょうから、
第6章など、3.11後の現在となっては
噴飯ものの記述もあります。
しかしそれを考慮しても、
本書の書籍としての価値は
相当に高いと私は考えます。

さて、巻末の発行日を見ると、
「2011年3月10日第3版発行」!?
えっ、東日本大地震の前日?
発売開始は確か2011年の
8月頃だったと記憶しています。
本書の改訂作業が終わり、
印刷も完了し、
発売を待つ段階になって
東日本大震災が起こり、
今さら改訂も追加もできず、
やむなく発行するも、
3月11日以降の日付では
いささか内容的にうまくないと
考えたのでしょう。

察するに初回印刷分がさばけた段階で
追加印刷せず、すぐ廃刊。
したがって入手困難。
第4版が出版されても
いい頃合いなのですが、
まったく音沙汰がありません。
改訂作業中なのか
それとも改訂出版を諦めたのか、
よくわからない状況です。

もし改訂出版されるとしたら、
本書の内容が
どのように充実しているか、
原子力の危険性について
どう取り扱われているか、
フクシマ事故をどう評価し、
どう記載しているかで、
本書の価値、そして
日本原子力学会そのものの価値が
大きく変化するでしょう。

中学校高校
学校図書館に入れてほしい一冊です。

(2021.5.6)

Gerd AltmannによるPixabayからの画像

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