「われはロボット」(アシモフ)

描かれていない「その先」は、私たちが

「われはロボット」
(アシモフ/小尾芙佐訳)ハヤカ
ワ文庫

ロボット・RB34号は
人の心を読めるのではないか?
ロボットの電子頭脳に、
なぜそのような特殊機能が
備わってしまったのか、
心理学者・キャルヴィンは
その調査にあたる。
会話の中で、
RB34号は思いがけないことを
話し始める…。
「うそつき」

2回にわたって取り上げた
アシモフのロボットSF短篇集
「われはロボット」。
全9篇のうち、
少女グローリアの「ロビィ」
ロボット技師・
ドノヴァン&パウエルの3篇、
それ以外の5篇で
ロボットと関わるのは、心理学者・
スーザン・キャルヴィン博士です。

全9篇はそれぞれ異なる時期に
書かれた短篇集ですが、
その冒頭に「序章」を配置し、
キャルヴィン博士の回想を
語り手「わたし」が綴るという形式で
統一が図られています。

ハイパー基地内で、一台の
ロボットが行方不明となる。
それはロボット工学第一原則に
改変を施した特殊タイプで、
人間に危害を加える
可能性があった。
やがて他へ輸送するコンテナに
積み込んだ同型機に
紛れ込んだことが判明し…。
「迷子のロボット」

US社の請け負った依頼、それは
ライバル社からのものだった。
どうやら解決困難な問題を
自社の電子頭脳に
処理させたところ、
壊れたらしいのだ。
そのまま計算させると
US社の電子頭脳も破壊される。
解決を模索するキャルヴィン…。
「逃避」

やはりドノヴァン&パウエルの
3篇同様、ロボット・ミステリとでも
いうべき展開です。
「うそつき」では
ロボットの読心術に見えたものの
正体を解き明かします。
「迷子のロボット」では、
行方不明の一台を
見わけの付かない63台の中から
見つけ出す過程が描かれます。
「逃避」ではライバル社からの依頼を、
自社がまったく傷つかず、
一挙両得となるような妙案が
編み出されます。

次期市長選に立候補する
地方検事・バイアリイには、
妙なうわさが立っていた。
彼がロボットだというのだ。
彼が飲食している姿を見た者は、
確かに一人もいなかった。
彼がロボットであることを
証明するよう
US社は依頼をされるが…。
「証拠」

最後の2篇はやや毛色が異なります。
「証拠」では、
究極の人型ロボット
「ヒューマノイド」は、
X線等での解析を行わない限り、
人間と見分けるのは困難であることが
示されています。
バイアリイは確かに
ヒューマノイドだったのですが、
巧妙な作戦で自分が
「ロボットではない」ことを
証明してしまいます。

地球は東部・熱帯・欧州・北部の
4地区に分けられ、
それぞれを統括する
「マシン」(電子頭脳)によって
安定した政治経済が保たれ、
世界は平安な時代を迎えていた。
ところが「マシン」の出す計画が
遅れ始めてくる。
それは最終戦争の…。
「厄災のとき」

最後の一篇は電子頭脳
(つまりは今でいうAI)が管理する
社会について描かれています。
1950年の段階でAIによる
政治統制された社会を描くという
先進性に驚きます。
AIが導く先、
そしてそれがユートピアとなるか
ディストピアとなるかについては
描かれていません。
さらにはそれをAIに委ねることの
是非についても
アシモフは態度を明確にしていません。
「厄災の時」に描かれていない
「その先」は、何年か後に、
私たちが実社会で明らかにすべき
問題なのかもしれません。

海外のSF作品について
食わず嫌いだった私ですが、
50半ばにして読み始め、
その面白さにはまっています。
特に本書は、若い段階で触れるべき
作品だと感じました。

(2021.12.16)

Peter PierasによるPixabayからの画像

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