顕微鏡によるプランクトン観察のためのバイブル
「プランクトンハンドブック淡水編」
（中山剛･山口春代）文一総合出版
多くのプランクトンは
顕微鏡を使わないと
見ることができないため、
日常生活の中で意識することは
少ないかもしれません。
しかし、顕微鏡をのぞけば、
その中には多様な世界を
見ることができます。ぜひ
近くの池のプランクトンを…。
学術書ではなく、
中学生が興味を持って
使いこなせるような微生物図鑑は、
なかなか見つからなかったのですが、
ありました。
本書｢プランクトンハンドブック｣は、
まさに顕微鏡による
プランクトン観察のための
バイブルのような一冊です。
生徒一人一人がこれを片手に池の水を
顕微鏡観察することができたなら、
さぞかし生き生きと
取り組むことでしょう。
〔本書の構成〕
この本の使い方
イラスト検索図
細菌
真核生物
アーケプラスチダ
アルベオラータ
ストラメノパイル
リザリア
エクスカバータ
所属不明の真核生物
オピストコンタ
プランクトンを観察しよう
用語解説
参考になる本･ウェブサイト
索引
あとがき
※詳しくはこちらから(出版社HP)
この本の使いやすさ①
観察に適したコンパクトサイズ
顕微鏡観察は、
それだけで場所を取るものです。
大きな図鑑など理科室のテーブルに
収まるはずがありません。
その点、本書のサイズはコンパクト。
18.2×11.3cmと、
新書本サイズより若干大きい程度です。
これなら場所を取りません。
顕微鏡をのぞきながら、
これはどの生物だろうと、
わくわくしながら観察できるでしょう。
この本の使いやすさ②
目に飛び込んでくる鮮明な画像
当然のことですが、
掲載されている画像はすべて鮮明で、
美しさを感じさせます。
この手の図鑑は美しさが命です。
近年｢世界で最も美しい○○図鑑｣
なるものがやたらと
眼につくようになりましたが、
本書はそうした美しさと実用性を
兼ね備えたものなのです。
この本の使いやすさ③
イラスト検索図とイラスト案内
そして何といっても本書の最大の特徴は
｢イラスト｣を効果的に
使用しているという点にあります。
子どもたちは
個体のちがいを認識するとき、
写真よりもイラストのほうが
捉えやすいと思うのです
(イラストによるいろいろな｢擬人化｣が
流行るのもそのせいではないかと
思っています)。
冒頭数頁に及ぶイラスト検索図は、
かなり使いやすいものであるはずです。
｢種の同定のしやすさ｣こそ
使いやすい図鑑の条件です。
本書はその点において、
まさに中学生向きの一冊なのです。
さらにところどころに挿入された、
擬人化されたプランクトンによる
イラスト案内、そしてコラムも、
子どもたちの興味関心を
かき立てるに違いありません。
文章も分かりやすく、
これなら子どもたちの拙い読解力でも
十分理解可能です。
顕微鏡観察のお供に最適なのですが、
それに限らず、
ただペラペラと頁をめくって
つまみ読みしても
面白く読むことができます。
中学生の朝読書にも
向いていると思います。
こうした図鑑は、立派な装幀で
高価な値段であることが多く、
なかなか中学生に
薦めるのに難しいものがありました。
また、小中学生に的を絞った図鑑は、
やたらに大型で、書いてある内容も
子どもをなめているような
安易な記述のものも散見され、
これはというものが
見当たりませんでした。
本書はそうした意味でも画期的です。
全国の中学校の図書館に
備え付けるべき一冊です。
いや、理科室に
一クラスの生徒の人数分常備するべき
ハンドブックです
(実際には無理でしょうが)。
まずは中学生の子どもを
おもちのみなさん、
この本からお子さんの自然科学に対する
興味関心を掘り起こしてみませんか。
もちろん大人のあなたにも
お薦めします。
（2023.3.7）
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