
味わいどころはずばり、「迷える大学生の姿」。
「動物学科空手道部卒業高田トモ!」
(片川優子)双葉文庫
三年生となったトモは、
研究室と空手道部との
両立に悩む。研究室での
実験動物の当番が忙しく、
空手の練習になかなか
参加できなかったからだ。
付き合っている栄との関係も
ギクシャクしてくる。
そしてトモの
動物園実習が始まり…。
以前とりあげた片川優子の
「動物学科空手道部1年高田トモ!」
「動物学科空手道部2年高田トモ!」の
続編、そして完結編です。
大学1年生での
キャンパス・ライフを描いた第一作、
2年生に進級してからの
ドラマが展開する第二作に続き、
3年生としての一年、そして
終末に卒業前後のようすが加えられ、
堂々の「卒業」となるのです。
味わいどころはずばり、
「迷える大学生の姿」です。
〔主要登場人物〕
「私」(トモ・高田友恵)
…動物学科で学ぶ大学3年生。
空手道部員。
不器用で真っ直ぐ、でも鈍感な性格。
栄
…空手道部3年生。
ぶっきらぼうな物言いだが、
周囲への的確な配慮があり、
頼りになる存在。
トモと付き合っている。
ミヤビ、マル、愛ちゃん
…「私」と同じ学科の大学生(女子)。
岡本(岡本藍子)、真知子(麻地真知子)
…空手道部3年生女子。
仲西
…空手道部4年生女子。
「私」が頼りにしている先輩。
柏木、浩介(小出浩介)
…空手道部2年生男子。
ゆみちゃん(中曽根ゆみ)
…「私」と同じ研究室の3年生。
白壁
…「私」の所属する研究室の4年生。
今西、常田、田中
…研究室の後輩。
まおちゃん
…「私」とともに動物園実習に参加した。
野倉朝美、山瀬
…実習先の動物園の職員。
南、須田
…動物園での実習メンバー。
金本
…動物園での実習メンバー。
「私」に動物病院実習を斡旋する。
「院長先生」
…実習先の動物病院の院長。若い女性。
桐谷、間島、吾川
…実習先の動物病院の職員。
「お姉ちゃん」
…「私」の姉。OL。結婚が決まる。
本作品の味わいどころ①
研究室での超多忙さに迷う大学生の姿
3年生ともなれば、
大学生は大忙しとなります。
研究室に所属し、
卒論準備と就職活動が開始されます。
空手道部の活動においても
3年生がリーダーシップを
発揮しなくてはなりません。
アルバイトも経験しているでしょう。
大人でさえもそうした
自己マネジメントの
苦手な人間が多い中、
ましてや大学生です、
うまく立ち回れるはずがありません。
「私」もそれができずに悩むのです。
しかし多忙に振り回されている
ばかりではありません。
安易に他者のせいにするのではなく、
自分をしっかり見つめ直し、
自身の在り方を考えているのです。
ここには未成熟でありながらも
よりよく生きようとしている
人間の姿があります。
この、研究室での
超多忙さに迷う大学生の姿こそ、
本作品の第一の味わいどころなのです。
しっかりと味わいましょう。
本作品の味わいどころ②
すれ違い続きの恋愛に迷う大学生の姿
仕事が忙しくなれば
家庭がおざなりとなる大人同様、
学業が忙しくなれば大学生の恋愛は
おろそかになってしまいます。
そうでなくても不器用なトモと
無愛想な栄です。
当然のごとくすれ違いの連続です。
だからといって誤解が誤解を呼ぶような
大きな展開の変化はなく、したがって
偶然の事件から二人の中が
強固になるようなドラマもありません。
ごく自然な大学生二人の関係が
描かれるだけです。
それがいいのです。
この、すれ違い続きの恋愛に迷う
大学生の姿こそ、本作品の
第二の味わいどころとなるのです。
じっくりと味わいましょう。
本作品の味わいどころ③
間近に迫る職業選択に迷う大学生の姿
大学3年生となれば、
就職活動の一環としての
インターンシップ(職場体験)が
待ち構えています。
トモの周囲には、
将来の職業を見通している
メンバーばかりで、次々と
インターンシップ先を確保しています。
「私」は、「やりたいこと」が
見つかっていないことに
不安と焦りを感じるのです。
しっかりとした目的があって
大学入学を果たした学生がいる一方で、
目的意識が希薄なまま
選択してしまった学生もいるでしょう。
むしろ現実世界では
後者の方が多いのではないでしょうか。
「私」もまた、
姉への反発心と「動物が好き」という
きわめて単純な理由から選んだ
動物学科です。
彼女はどのようにして
自分の進路を切り開いていくのか?
それについてはぜひ読んで
確かめていただきたいと思います。
この、間近に迫る職業選択に迷う
大学生の姿こそ、本作品の第三の
味わいどころとなっているのです。
たっぷりと味わいましょう。
前二作同様、大きな展開の変化はなく、
淡々と大学生活が
描かれているだけです。
だからこそ、味わいがあるのです。
高校生が読めば、
大学生活の予備知識を得るとともに、
進路選択の一助となるはずです。
大人のあなたが読めば、
かつての自分の大学生活と比較し、
ノスタルジックな気分に
浸れるでしょう。
もしくはあったかもしれない大学生活に
思いを馳せ、
自分の生き方について振り返る
きっかけとなるかもしれません。
ぜひご賞味あれ。
(2025.7.23)
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