「福祉ってなんだ」(古川孝順)

つまり、読む側もその「本気度」が試される

「福祉ってなんだ」(古川孝順)
 岩波ジュニア新書

社会福祉は、
社会と人間の両面にかかわり、
両者の接点、相互作用に
焦点をしぼりながら
問題の解決、緩和、軽減をめざす
社会的な施策です。
しかし、そうはいっても
簡単には得心がいかないところが
あるかもしれません。
たとえば…。

「社会福祉」というと、
なにか貧しい方を救済するための
公的なしくみ、という
イメージがありました。
しかし私の家でも長男が要介護となり、
さまざまな社会福祉サービスを
利用している関係上、
「知らない」では済まされなくなり、
勉強のために
本書を読み始めた次第です。
岩波ジュニア新書の一冊です。

〔本書の構成〕
はじめに
第1章 社会福祉をときほぐす
 ⑴変化する社会福祉コンシャスネス
 ⑵社会福祉の世界
 ⑶選別的な社会福祉から
   普遍的な社会福祉へ
 ⑷社会福祉の概念規定
 ⑸社会福祉の構成要素
第2章 社会福祉の成り立ち
 ⑴歴史に学ぶ
 ⑵社会福祉の原風景
 ⑶生活維持は
   個人の責任か社会の責任か
 ⑷福祉国家と社会福祉
 ⑸社会福祉の21世紀
第3章 社会福祉が必要とされるわけ
 ⑴利用者から社会福祉の対象を考える
 ⑵生活問題の形成
 ⑶社会的ニーズの性格
 ⑷社会的ニーズの対象化
第4章 社会福祉のしくみ
 ⑴社会的生活支援システムの形成
 ⑵社会的生活支援サービスの構成
 ⑶社会福祉運営の原理と原則
 ⑷社会福祉運営の枠組み
 ⑸社会福祉援助の配分原理
 ⑹社会福祉援助の提供組織
第5章 社会福祉のサービスプログラム
 ⑴社会福祉の法体系
 ⑵社会福祉事業の範囲と種類
 ⑶地域福祉型社会福祉としての展開
 ⑷社会福祉援助の手段形態別類型
 ⑸社会福祉援助を利用する場
 ⑹社会福祉施設の類型
第6章 社会福祉を利用する
 ⑴援助実施のシステム
 ⑵援助利用の手続き
 ⑶援助の展開過程
 ⑷援助の理念
 ⑸援助の類型
 ⑹援助の技術
 ⑺援助の質的向上
 ⑻援助利用の支援
第7章 社会福祉を支える
 ⑴社会福祉をになう人びと
 ⑵社会福祉専門職の働き
 ⑶社会福祉を科学する

本書の章立てを、
上に詳しく記しましたが、
これらの小見出しからもわかるように、
その内容は中高生向けを超えて、
大学の教科書レベルとなっています。

本書の味わいどころ①
社会福祉について本気で学ぶ

なぜ大学の教科書レベルなのか?
「はじめに」において、
筆者は表題である
「福祉ってなんだ」という問いには、
「迂闊には答えられない」、
つまり全力で応えるしかないと
考えているのです。
そして著作の一つである
「社会福祉原論」を定本として
利用した、とあります。
恐らく大学の教科書として
使われているであろう一冊を、
新書版220頁に凝縮したのです。
文章が敬体となっているものの、
その内容はきわめて高度なのです。

つまり、読む側もその「本気度」が
試されるというわけです。
難解な専門用語も容赦なく登場します。
一部はネット検索等で簡単に確認し、
大意が捉えられる分にはスルーし、
何度も頁を前に戻りながら
読み進めることになりました。
簡単に理解できることが
いいことなのではありません。
苦労して読むことにより、
社会福祉の概念がおぼろげながらも
自分のものとなってくるのです。
この、社会福祉について
本気で学ぶ読書体験こそが、
本書の第一の味わいどころなのです。

本書の味わいどころ②
社会福祉の全体像をとらえる

「はじめに」には、
こうも記されています。
「現代社会福祉の全体像を一定の視点、
枠組み、手続き、言語(概念)を駆使し、
可能な限り理論的に
描き出そうと心がけてきました」。
つまり社会福祉全体が
一冊の新書にまとめられてあるのです。

当然、
「中高生の興味のわく部分から始める」、
などといった配慮はありません。
系統性を重視した構成です。
具体例や身近に感じられるような
エピソードの紹介も
まったくありません。
全体像を凝縮すれば、
それも当然なのです。
取っ付きにくいのは致し方ありません。

しかし社会福祉の多様な側面を
余すところなく整理して
提示しているのです。
これから本気で
社会福祉を学ぼうとしている高校生には
うってつけの一冊だと感じます。
社会福祉に関わる学問領域に踏み出し、
そして社会福祉の道に
突き進んでいくことを想定したとき、
本書はまさに最適の一冊となるのです。
この、現代における
社会福祉の全体像をとらえることこそ、
本書の第二の
味わいどころとなるのです。

本書の味わいどころ③
社会福祉との関わり方を知る

そして本書は、一人一人の人間が、
社会福祉とどう関わっているのか、
もしくは将来
どう関わることになるのか、
その視点も織り込まれてあります。
社会福祉に関わる職業は多岐にわたり、
そうした職業に進路を考えている
高校生も少なくないはずです。
また、貧困だけでなく、
さまざまな形で社会福祉を
私たちは日々利用しているのです。
普段意識することのない社会福祉が、
現実問題としてどのように私たちに
関わっているのかを知ることは、
とても大切なことだと思うのです。
この、社会福祉との関わり方を
知ること考えることこそ、
本書の最大の
味わいどころとなっているのです。

著者・古川孝順氏は、
日本の社会福祉学の第一人者です。
本書を読むと、著者の
真面目で几帳面な性格がうかがえます。
軽い気持ちで読むことなどできません。
本気で書き表した著者に負けないよう、
本気で読み味わいましょう。

(2026.2.11)

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