「地方消滅2」(人口戦略会議)

より大きな衝撃と、確かな未来への希望

「地方消滅2」(人口戦略会議)
 中公新書

日本は本格的な
人口減少時代に突入した。
このような
歴史的な転換期にあって、
ただ少子化の流れに
身を任せていていいのだろうか。
今、ここで
行動を起こさなければ、
日本とその国民が
人口減少という巨大な渦のなかに
沈みつづけて…。

2014年出版の「地方消滅」、そして
2015年出版の「地方消滅 創生戦略篇」
昨年取り上げました。
今回は2024年に刊行された
それらの続編「地方消滅2」です。
より大きな衝撃と、
確かな未来への希望が読み取れる
一冊です。

〔本書の構成〕
序章 「消滅可能性都市896」の衝撃
Ⅰ部 消滅自治体 最新データ篇
 第1章 地方自治体
  「持続可能性」分析レポート
 第2章 全国1729自治体
  リストから見えた地域の特性
 第3章 人口減を
  止められなかった10年
Ⅱ部 2100年への提言篇
 第4章 緊急提言
  「人口ビジョン2100」
 第5章 人口減少、どう読み解くか
  ・少子化・人口減の深刻さは
   なぜ共有されないか
・正社員とパートの
   賃金格差解消こそ最重要課題
・東京出生率0.99の衝撃
   基本から知る低出生の現実
 第6章 今が未来を選択できる
  ラストチャンス
全国1729自治体の9分類

本書の味わいどころ①
「減少」「増加」の二極化の可視化

今回の続編は、
人口戦略会議が発表した
最新の分析に基づいています。
これは国立社会保障・人口問題研究所の
推計をベースにした、
信頼度の高い現状分析となっていると
感じます。
「Ⅰ部 消滅自治体 最新データ篇」では、
そうしたデータの解析から、
十年前の予測と比較し、
現状を正確に報告しています。

何よりも興味を引くのは、
実際に「消滅可能性」から脱した自治体と
状況がさらに悪化した自治体の差を
浮き彫りにした点です。
全体的に見たときの少子化基調は
変わっていないとしても、
その中で改善を示した自治体の対策は、
他の自治体にとっても
大きな参考になるはずです。

特に「封鎖人口」(人口の流入が
ない場合における人口変動)と
「移動仮定」(人工乳流を仮定した
場合における人口変動)を分け、
それぞれの減少率から各自治体を
3×3のマトリックスに振り分け、
それをもとに
「A:自律持続可能性」
「B:ブラックホール型自治体」
「C:消滅可能性自治体」
「D:その他」と分類した
「自治体の人口特性別9分類」は、
人口減少の原因とそれに対する対応を
わかりやすく伝えています。

そうした詳細な具体的データを
提示することにより、
人口の減少している多くの自治体と、
増加もしくはわずかな減少の自治体との
二極化が「見える化」されているのです。
「漠然とした危機」ではなく
「具体的な現象」として
提示しているため、
予備知識のない方が
読んでもすんなり納得できるはずです。
この「現象」「増加」の
二極化の可視化こそ、
本書の第一の味わいどころなのです。
しっかりと味わいましょう。

本書の味わいどころ②
新たな分類「ブラックホール型」

その「自治体の人口特性別9分類」で
登場する「ブラックホール型自治体」。
これが今回の分析における注目点です。
「ブラックホール型自治体」とは、
出生率は低いものの人口流入によって
人口が維持されている自治体であり、
主に首都圏を中心とした
わずかな数です。
現代日本は、東京でさえも
他県からの人口を吸収して
はじめて維持できているということが
明らかになったのです。
つまり人口減少は
地方だけの問題ではなく、
首都圏を含めた
国家全体の構造的欠陥であることが
明確に示されたのです。
東京の低出生率を「日本の人口を
吸い込むブラックホール」と
定義したのは鋭い指摘です。
この、新たな分類
「ブラックホール型自治体」の存在を
認識することこそ、
本書の第二の
味わいどころとなるのです。
じっくりと味わいましょう。

本書の味わいどころ③
議論のプラットフォーム的価値

2014年の前作出版以降、
この人口減少の問題は
さまざまな議論を呼び起こしました。
そして今回の第二弾は、
そうした議論を集約するとともに、
改めて議論を呼び起こし、
それが本書の評価や批判という形で
集まってきつつあります。
まさに本書が
議論のプラットフォームと化している
印象があります。

前作が「ショック療法」だったとすると、
今作は「持続可能な縮小と存続」を掲げ、
いかに未来の日本を
デザインするかという、
より現実的な課題、
しかし一層重い課題を突きつけていると
考えられます。
もはや自治体間の
「勝ち残り」競争などではなく、
国家を挙げての戦略的な
「撤退」「縮小」戦略や、
各自治体間の利害を突き抜けての
「共生」の必要性を説いているのです。
議論は煮詰まりつつあると感じます。
この、人口減少に関する
国家的戦略の議論の
プラットフォーム的役割と価値こそ、
本書の大きな魅力であるとともに、
最大の
味わいどころとなっているのです。
たっぷりと味わいましょう。

巷では依然として本書に対する
いくつかの批判が存在しています。
一つは「消滅という言葉の強さが
議論を単純化する」といったものです。
しかしこれだけのインパクトがあっても
この十年間、日本は
何も有効な対策を打てなかったのです。
マイルドな言葉を選択していれば、
話題にすらならなかったでしょう。

「人口減少=悪という固定化した読みが
政策議論を単純化している」という
指摘も見受けられます。
しかしこれもこの十五年程度の
地方の現状(行政サービスの低下や
人手不足などの諸問題)を見れば、
悠長な意見としか
いいようがありません。

また、
「都市の集約化(コンパクトシティ)」を
重視する姿勢に対し、
切り捨てられる周辺地域の反発や、
効率重視の政策が
地域文化を損なうという
懸念を示す方もいらっしゃいます。
それは当然の意見です。
しかしながら、すべてを満足させながら
この未曾有の危機を乗り越えることなど
できるはずがないのです。

批判があって当然であり、
その批判から新しい視野が広がることは
もちろんです。
現代日本を生きる私たちは、
「どうすればこの国を畳まずに
生き残ることができるか」という、
非常に高度な経営戦略を
試されているのです。
まずは人口減少に
関心を持つことが大切です。
前作「地方消滅」とともに、
ぜひご賞味ください。

(2026.2.18)

〔関連記事:「地方消滅」〕

「地方消滅」
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