「トム・ソーヤーの探偵」(トウェイン)

トムがホームズなら、ハックはワトソン

「トム・ソーヤーの探偵」
(トウェイン/大久保康雄訳)
(「トム・ソーヤーの探偵・探検」)
新潮文庫

トムとハックは叔母さんの指示で、
アーカンソーの
サリー叔母さんの元へ行かされる。
サイラス叔父さんに
何か重大なことが
起こっているのだという。
2人はアーカンソー行きの
船の中で、
不思議な行動をする男・
ジェイクと出会う…。

全13章の、最初の3章を読んだだけで、
どんな冒険が起こるか
わくわくしてしまいました。
何しろいきなりお宝登場。
この12000ドルのダイヤが
冒険の果てにトムとハックのものに
なるのであろうことは見通せます。

謎の男・ジェイクは、これから向かう
サイラス叔父さんと関わりのある
ダンラップ家の双子の片割れ。
そして彼は仲間とともに
12000ドルのダイヤモンドを
盗んだのだという。
加えて盗んだダイヤを巡っての
盗賊3人の仲間割れ。
陸に上がった途端に
ジェイクは殺される。
ところがジェイクの幽霊登場。
アーカンソーに着いてみれば、
サイラス叔父さんの様子が
なにやらおかしい。
ジェイクの幽霊は昼にも現れる。
ダイヤの行方やいかに!

と思っていると、
サイラス叔父さんが殺人容疑で
いきなり逮捕されます。

最期の3章は、
法廷でのトムの活躍が描かれます。
弁護人としてのトムの推理で、
サイラス叔父さんの無実が証明され、
めでたしめでたし。

このように、
簡単に説明するのが難しい筋書きです。
しかし、あっという間に読み終えます。
何しろ120ページ弱の短篇ですから。
ところが、
娯楽要素がふんだんに登場した割には、
肝心のトムとハックの
体当たり的な冒険が
ほとんどないのです。

「トム・ソーヤーの冒険」
「ハックルベリイ・フィンの冒険」では、
2人が果敢に行動して
窮地を脱する場面が幾度もあり、
作品の大きな魅力となっていました。
それが今回はトムの頭脳プレーで
サイラス叔父さんを救出し、
かつダイヤを奪還するだけなのです。
期待が大きかった分、
肩すかしを食ったような気がしました。
この作品における作者の意図は…?

本作品は実は探偵小説なのです。
本作品が書かれたのは1896年。
コナンドイルのホームズシリーズが
脚光を浴び始めた時期に一致します。
さしずめトムがホームズなら、
ハックはワトソンという
ことなのでしょう。

探偵小説としての完成度は
お世辞にも高いとは言えません。
しかしトウェイン・ファンであれば、
トムとハックの
その後が描かれているだけで
満足してしまうのではないでしょうか。
続編はいいものです。

(2018.10.23)

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