「GO」(金城一紀)②

何とインテリジェンスな高校生カップル

「GO」(金城一紀)講談社文庫

昨日は本書について、
在日韓国人や国籍に関わる
問題提起という側面から
取り上げました。
でも本書の特徴はまだあります。
主人公・杉原と恋人・桜井の
インテリジェンスな人物設定です。
何しろ、映画、絵画、クラシック音楽、
ジャズ、オペラの作品を
お互いに薦め合い、
鑑賞しているのですから。

まずは出会いの場面。
杉原は突然目の前にあらわれた桜井を、
映画で表現しています。
「彼女の髪は『勝手にしやがれ』の
 ジーン・セバーグのように短かった」
「『エイジ・オブ・イノセンス』の
 ウィノナ・ライダーの瞳」

桜井も負けずに
「『大人は判ってくれない』の
 男の子みたい」
その後、会話の中には
次々に名画のタイトルが。
「アルカトラズからの脱出」
「ペイルライダー」
「ダーティ・ハリー」。

そして初めてのデートは美術館。
桜井から好きな画家を尋ねられ、
杉原は「ルオーとシャガール」。
ルオー「老いた王」、
シャガール「横たわる詩人」、
ダリ「たそがれの隔世遺伝」、
ミレー「晩鐘」。

CDショップに入れば、
杉原はロック、
桜井はジャズの名盤を薦め合います。
ロックは、
ブルース・スプリングスティーン、
ルー・リード、
ジミ・ヘンドリックス、
ボブ・ディラン、
トム・ウェイツ、
ジョン・レノン、
エリック・クラプトン、…。
ジャズも負けていません。
マイルス・デイヴィス、
ビル・エヴァンス、
オスカー・ピーターソン、
セシル・テイラー、
デクスター・ゴードン、…。
女子高生がこれだけの
ジャズの名盤を聴き込んでいる。
渋すぎます。

嬉しいことに、
二人はいろいろな小説も読んでいます。
ジョン・アーヴィング、
スティーヴン・キング、
レイ・ブラッドベリ、
ジェイムズ・M・ケイン、
レイモンド・チャンドラー、
ダシール・ハメット、
アラン・シリトー、…。
すみません。
勉強不足です。
私はこれらの作家をまだ読んでいません。

とどめはオペラ。
2人でせっせとオペラを聴いています。
「フィガロの結婚」、
「タンホイザー」、
「蝶々夫人」、
「ばらの騎士」、
「カヴァレリア・ルスティカーナ」、…。

何とインテリジェンスな
高校生カップルでしょう。
黒縁メガネの七三分け学生服男子と
三つ編みお下げセーラー服女子の
イメージが浮かんでしまいます。

でも読めば印象はがらりと変わります。
本書は暴力場面あり、
性的場面ありで、
中学生に薦めるのは躊躇するのですが、
それを補ってあまりある魅力が
やはり本書にはあるのです。

(2019.1.14)

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