「羊羹」(永井荷風)
戦後復興期の小市民のおかしみ 「羊羹」(永井荷風)(「日本文学100年の名作第4巻」) 新潮文庫 東京の小料理屋で 働いていた新太郎は戦後、 物流の仕事で思いがけず 金回りがよくなる。 羽振りのいいところを 自慢しようと...
戦後復興期の小市民のおかしみ 「羊羹」(永井荷風)(「日本文学100年の名作第4巻」) 新潮文庫 東京の小料理屋で 働いていた新太郎は戦後、 物流の仕事で思いがけず 金回りがよくなる。 羽振りのいいところを 自慢しようと...
失われゆく江戸情緒を文章に留める 「墨東綺譚」(永井荷風)新潮文庫 「わたくし」=大江匡は、 執筆中の小説「失踪」の 主人公・種田の性格描写の取材と、 隣人の騒音からの回避のため、 玉の井に通い始める。 ある日の夕方、 ...
瀟瀟と雨の降る一日に 「雨瀟瀟」(永井荷風)(「百年文庫028 岸」)ポプラ社 「わたし」と付き合いのあるヨウさんは、実業家であるとともに艶福家であり、そして妾を抱えていた。ヨウさんの用いる彩牋堂主人という雅号を知ってい...
妖しげな部分は全くありません。 「来訪者」(永井荷風)(「文豪怪談傑作選・昭和篇」)ちくま文庫 悪夢に襲われ、熟睡できなくなった「わたくし」は、不思議な力を持つ酌婦のもとへ通いつめる。その女と夜を過ごすと、悪夢から逃れる...
視点を変えると見える姿は違ってきます 「よろこびの歌」(宮下奈都) 実業之日本社文庫 高名な音楽家を母に持つ玲は、 音大附属高校の受験に失敗し、 挫折感を抱いたまま 新設の女子校へ進学する。 2年の秋、 合唱コンクールの...
これこそが現代の学園物語 「よろこびの歌」(宮下奈都) 実業之日本社文庫 玲が指揮した合唱は コンクールで さんざんな結果に終わる。 その1ヶ月後に行われた マラソン大会で、 玲は一番最後に ゴールに駆け込む。 そのとき...
「友だち」の「友だち論」を交えた「友だちの在り方」論 「まるごと好きです」(工藤直子)ちくま文庫 中学のころから、 ひとと出会うときは、 まずまるごと好きになる、 というふうになってきた。 まるごと好き、というのは、 「...
かまきりりゅうじの詩ってすげえよな 「新編 あいたくて」(工藤直子)新潮文庫 「かまきりりゅうじの詩って すげえよな。」4月に聞いた、 中学校一年生の発言です。 おいおい、 それは工藤直子の詩だろう。 そう教えても、タイ...
人気は今ひとつ、でも読みどころは豊富です 「猫館」(横溝正史)(「七つの仮面」)横溝正史 東京の辺鄙な一画にある 通称「猫館」と呼ばれる古い洋館で、 女占い師・ドクトル・ハマコが 殺害される。 現場を訪れた金田一耕助は、...
からくり仕立ての洋館・蘇生術・荒々しい謎解き 「貝殻館綺譚」(横溝正史) (「蔵の中・鬼火」)角川文庫 月代を崖の上から 突き落として殺害した美絵は、 岬の監視小屋から少年が 一部始終を見ていたことに気付く。 美絵が寄...