「ふるさとを元気にする仕事」(山崎亮)

「まちづくり」だけでなく生き方を考えるための一冊

「ふるさとを元気にする仕事」
(山崎亮)ちくまプリマー新書

都市部以外のすべての地域で
「地方消滅」の危機が
ささやかれ始めました。
私の住む地域は特に深刻です。
昨年度の私の県の人口増減は、
自然増減で10000人減
(出生5000人、死亡15000人)、
社会増減で4000人減
(転入12000人、転出16000人)。
人口流出と人口減少、
そして少子高齢化が加速しています。

では、そうした地域を
元気にする方法は存在するのか?
その難しい問いに対する
解答は示されていません。
しかし、解くための手がかりが、
本書にはふんだんに溢れているのです。
新しい「まちづくり」、
それが「コミュニティデザイン」
なのだそうです。

まず筆者は、
問題の本質を的確に提示しています。
「僕たちが
解決しなければならない問題は、
人口が減ること自体ではなく、
減り方の中で生じる課題を
どうやって見つけ、
どう乗り越えていくかということです。」
日本全体が人口減少を迎える時代です。
減少を食い止める方法ではなく、
それによって生じる問題を
一つ一つ解決していくことが
大切になるのです。

そして「まちの問題は、
まちに暮らす人たちが
主体的に解決する」ことが
大切だと説きます。
かつて各地の役場で見られた
「すぐやる課」を例に出し、
行政サービスの安易な拡充が
住民を「お客さん」にしてしまったと
解説しています。
私たち住民が問題解決の主体と
ならなければいけないのです。

加えてまちづくりでは
「ゴールを先に設定し、
そこから現在を振り返りながら、
いまやるべきことを
導き出す思考法」が大切であると
述べています。
どんなまちにしたいかという、
「未来」を規準にする
バックキャスティングの思考法が
大切なのは、
人生設計とも共通しています。

私が最も共感できたのが、
「僕も仕事を道楽にすることを
目指して生きてきたし、
かなりの部分で道楽化が
できていると思っています」という
筆者の言葉です。
ブラック企業をはじめとする
長時間労働が
昨今話題となっていますが、
仕事にやりがいや充実感、
楽しさや達成感が
十分にあるのであれば、
多忙であっても多忙感を
感じないのではないかと思うのです。

「まちづくり」や
「地方の活性化」だけではなく、
自分自身の生き方を振り返る上でも
大いに参考になりました。
これからの時代を生きる高校生に
ぜひ読んでもらいたい一冊です。

※筆者・山崎亮氏は現在44歳。
 私よりも8歳も若いのに、
 このような充実した生き方を
 していらっしゃる。
 勉強になりました。

(2019.6.10)

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