「カラー版 天文学入門」(嶺重慎・有本淳一)

中学校3年生の理科の副読本に指定したい一冊

「カラー版 天文学入門」
(嶺重慎・有本淳一)岩波ジュニア新書

前回に続いて、
宇宙の本をもう一冊。

「小学校や中学校で使われている
理科の教科書をみると、
天文学に関する部分は
まったくといってよいほど
おもしろくありません」。
本書のあとがきに書かれている、
著者二人の意見です。同感です。
中学校理科の天文学(中3で学習)は
つまらないのです。

教科書で重視されているのは
天文学の「面白い」部分ではなく、
天体の運動のメカニズム、
つまり恒星や惑星の日周運動・年周運動
(1日・1年の星の見え方と
その原因)といった部分なのです。

確かに天体の運動を理解することは、
高度な思考力を必要としますので、
学術的であり総論的であり
本質的であるといえます。
現代の学校教育が知識偏重から
思考力重視へと舵を切っているので
仕方のないことではあります。

しかしそれは「入試」を前提と
しているからだと思うのです。
好奇心旺盛な中学生が
知りたいと思うのは、
星がどの方角からどの方角へ
1時間に何度動くかなどではなく、
水星や木星、
アンドロメダ銀河や
ブラックホールといった
天体の真の姿だと思うのです。

そうした子どもたちの知の欲求に、
十分に応えてくれるのが本書です。

「第1章 わたしたちは
どこから来たのだろう」
では、
宇宙の中の地球と、
地球の上の人類に焦点を当て、
私たち人間と宇宙との関わりから
紐解いていきます。

「第2章 太陽系の世界と
わたしたちの地球」
から、
豊富な写真をもとに、
惑星や衛星、彗星など、
太陽系の天体の説明が始まります。

「第3章 深化する星ぼしと
元素の起源」
では、
太陽系の外に踏み出し、
恒星の一生について
解説しています。

「第4章 銀河系と
生命のふるさと」
では、
天の川が
私たちの所属する銀河の姿であり、
そこに多くの恒星系が
ひしめいている様子を伝えています。

「第5章 すばるや
ハッブル望遠鏡で見た銀河」
「第6章 宇宙のはじまりと
現在,未来」
では、
さらに外宇宙へと視点が移り、
宇宙に無数に存在する
多種多様な銀河を紹介しています。

視点が人類・地球からはじまり、
太陽系、銀河、外宇宙へと進み、
読み進めると
宇宙旅行をしたような
気分に浸れます。
これこそまさに「天文学入門」。
中学校3年生の理科の
副読本に指定したいような一冊です。

(2019.7.9)

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