「ABO血液型がわかる科学」(山本文一郎)

100%理解しようと思わなくてもいいのです

「ABO血液型がわかる科学」
(山本文一郎)岩波ジュニア新書

「ABO式血液型を属性とする
日本独自の占い。
ただし、科学的な根拠は全く無い。」
ウィキペディアが解説している
「血液型占い」です。
日本では未だに血液型占いや
血液型による性格分類を
信じている人が多いと思います。
私の勤務校の中学生も、
何かにつけて血液型を持ち出します。
でも、そもそもABO血液型とは何か、
しっかりと理解できている人は
少ないのではないでしょうか。

私は理科教師として、
中学校3年生の理科の遺伝の単元で、
このABO血液型の遺伝の例を
説明しています。
教科書では
メンデルのエンドウの実験を
用いているのですが、
それだけでは遺伝が
身近なものとして
感じられないからです。
「A型の男性とO型の女性が
結婚した場合に生まれる
子どもの血液型」等の
思考実験を通して
遺伝を教えることにより、
子どもたちは親から
いろいろな形質を受け継いでいることを
実感できるのです。

そうしたABO血液型の遺伝について、
懇切丁寧に解説してあるのが
本書の第2章
「ABO血液型の遺伝のしかた」です。
遺伝とは何かという
基本的事項から始まり、
教科書でおなじみの
メンデルの法則についても
詳しく説明されています。
教科書よりもわかりやすいと
思われます。

また、ABO血液型の例外的な遺伝
(シスAB型)についても
取り上げられています
(私も初めて知りました。
勉強になりました)。

ただし、
それ以外の章は専門用語が多く、
ジュニア向け新書とはいえ、
大人が読んでも難しく感じるはずです。
特に第3章「血液型の違いは
どうして生まれる?」については、
高校生物を履修していなければ
理解が追いつかないはずです。

そうした難しい部分はあるのですが、
本書こそ中学校3年生の知識と
高校生物の学習を結びつける
絶好の参考書となると思うのです。
ともすれば暗記中心になりがちな
生物学の内容を、
中学生の関心のある分野に
焦点を当てて
系統的に解説した本は
決して多くないからです。

100%理解しようと
思わなくてもいいのです。
難しい専門用語は
読み飛ばしてもかまいません。
理解できている部分と
理解できない部分の
境目を見つけるだけでも
学習は大きく進みます。
本書を読んだ中学校3年生が、
一年後の高校の学習に
希望と期待を持つことこそ
大切なのです。

もちろん大人が読んでも
読み応えがあります。
岩波ジュニア新書は
「大人の自然科学入門書」としても
最適です。

(2020.1.30)

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