中学校1年生に薦めたい本100冊vol.9 12月

家族って何だ?

今、家族の在り方が変わっています。
大家族から核家族へと
移行したのはもはや過去。
母子家庭、父子家庭、
家庭内別居、夫婦別姓、
…いずれ同性婚が認められれば、
母2人と子1人などという
家族の形も出現するのでしょう。

家族の在り方を問う作品は
いろいろあります。
私などは鷺沢萠
「ウェルカム・ホーム!」(新潮文庫)に
心を動かされたのですが、
中学校1年生に薦めるとすれば、
次の9冊でしょう。

その1
「幸福な食卓」(瀬尾まいこ)

父親を辞めると宣言した父。
別居中なのに
料理を届けに来る母。
天才的頭脳を持ちながら
晴耕雨読の日々を送る兄。
佐和子の家族は
みんなどこか変わっている。
そんな中で佐和子は
気になる男の子・大浦くんと
出会い、惹かれていく…。

その2
「ハーフ」(草野たき)

おまえの母さんは、
ヨウコなんだよ」。
父親からそう言われて
育ってきた真治。
おかしなことだと分かりながら、
彼は気づかないふりをしてきた。
でも、本当のお母さんのことを
彼は知りたかった。
なぜならヨウコは
飼い犬だから…。

その3
「天然理科少年」(長野まゆみ)

放浪癖のある父に連れられて
転校を繰り返していた岬。
何度目かに辿り着いた
山間の中学校で、彼は
不思議な少年・賢彦と出会う。
しかし級友たちは
彼に冷淡であった。
学級のリーダー・北浦は
賢彦が過去に
神隠しに遭ったことを語る…。

その4
「しずかな日々」(椰月美智子)

小学校5年生に進級し、
初めて友達のできた「ぼく」。
後ろの席の押野は
「ぼく」を草野球に誘い、
姉の作ったプリンの試食に誘い、
クラスの友達との間を取り持つ。
しかし夏休み前、
母の新しい仕事の関係で
「ぼく」は転校することに…。

その5
「大きくなる日」(佐川光晴)

保育園での夏祭りの日、
足の不自由なまゆかに
配慮しながら
しっかりと太鼓を
たたくことができた太二を、
おかあさんは強く抱きしめる。
それをいさめる姉・弓子に対し、
太二は答える。
「きょうのは、ぜんぜん
イヤじゃなかったよ」…。
「第1話 ぼくのなまえ」
 太二:保育園年長組

その6
「ミラクル」(辻仁成)

息子のアルと暮らす
ピアニストのシドは、
亡き妻を思い、
日々悲しみに暮れながら過ごす。
シドはアルに
「雪が降る日にお母さんは
帰ってくる」と教える。
母を知らないアルは、
2人の幽霊・ダダと
エラソーニと出会い、
友達になる…。

その7
「ミラクル・ファミリー」(柏葉幸子)

試験勉強をしている
「おれ」の部屋に来て、
マンガを読みはじめた「おやじ」。
人間の女の子に恋をした
キツネの話に涙を流している。
仕方なく話を聞くと、
父親、つまり「おれ」の祖父は
人間に化けた
たぬきだったのだという…。

その8
「思い出のマーニー」(ロビンソン)

心を閉ざす少女アンナ。
親代わりの
プレストン夫妻の計らいで、
自然豊かなノーフォークで
夏を過ごすことになった彼女は、
そこで不思議な少女
マーニーと出会う。
初めて親友を得た
アンナだったが、
マーニーは姿を消してしまう…。

その9
「パパ・ユーア・クレイジー」
(サローヤン)

マリブの海辺にある父の家で、
「僕」の新たな生活が始まる。
父は「僕」に、
「僕」自身の小説を書くよう
助言する。
「僕」は海や太陽を
知ってはいるけれど、
自分や世界を
本当に理解するには
どうすればいいのか、
「僕」は父に問いかける…。

いくつかの児童文学とともに、
中学校1年生にとっては
やや難しめのものも選んでいます。
すべて「家族とは何か」という
問いかけがなされている作品であり、
家族というものの形を考える
きっかけとなり得る作品ばかりです。
中学生ともなると、
家族に生活の大部分を依存しつつ、
その精神は家族から抜け出すことばかり
考えがちな時期だと思います。
だからこそ、
文学から「家族」を考えることは
大切だと思うのです。

中学校1年生のみならず、
大人のあなたにも読んでいただきたい
9冊です。

(2020.10.18)

Enrique MeseguerによるPixabayからの画像

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