「明治探偵冒険小説集2 快楽亭ブラック集」(快楽亭ブラック)

そもそも快楽亭ブラックとは何者か?

「明治探偵冒険小説集2
      快楽亭ブラック集」
(快楽亭ブラック)ちくま文庫

「明治探偵冒険小説集2」

革命の嵐を逃れて
英国へと渡った沢辺男爵。
彼は現地の女性と結婚するが、
仏国の情勢が収まると、
妻・おせんに何も言わずに
帰国してしまう。
そのときおせんの胎内にはすでに
沢辺の子種が宿っていた。
双子の男の子が生まれるが…。
「流の暁」

4回にわたって作品を取り上げた
明治の落語家・快楽亭ブラック
明治の時代特有の口述速記による
ミステリには
不思議な味わいがあります。
今年6月に購入したのですが、
それまでは「どうせゲテモノだろう」と
高をくくり、無視していました。
ところがこの「明治探偵冒険小説集
全4巻の1・3・4を購入し、
それらの面白さ故に
本書第2巻を購入した次第です。

馬車が終点に到着し、
加納は乗り合わせた婦人を
揺り起こそうとするが、
すでに事切れていた。
婦人は十七八歳の若さだったが、
医者は心臓死と判断する。
しかし、加納が車中から
拾い上げた着物止めの針は、
実は毒針になっていた…。
「車中の毒針」

そもそも快楽亭ブラックとは何者か?
巻末の年譜を読むと
以下のようなことがわかります。
1864年 6歳で両親と来日。
1876年 手品で寄席に出演(18歳)。
1880年 寄席にて「流の暁」を語る。
1886年 東京学館で英語を教える。
1887年 英会話本を刊行。
1891年 快楽亭ブラックを名乗る。
口述速記にて「流の暁」を
やまと新聞に連載開始。
「流の暁」「車中の毒針」を刊行。
1892年 「幻燈」を刊行。
1901年 「かる業武太郎」刊行。
この年、ブラック43歳。
ここまでは好調でした。

父を殺した犯人として、
恋人・又七が逮捕されたことに
おまさは心を痛め、
弁護士である
叔父・竹次郎に相談する。
竹次郎は
犯人の血染めの手形があることを
警察から聞き受け、
その指紋を使って犯人を
捜し出すことを思いつく…。
「幻燈」

現代と同様、
この時代もサブカルチャーの
流行り廃りはめまぐるしく、
ブラックの人気は
次第に凋落していきます。
そして1908年 自殺未遂。
さらに1913年 関東大震災の半月後、
65歳でこの世を去るのです。
晩年はかなり寂しい生活を
送ったようです。

ロンドンで設計士が金を奪われて
殺害される。
娘は犯人を追跡し、
見世物小屋の軽業師であることを
突き止めるが、
証拠不十分で釈放されてしまう。
父親の敵を討つため、
娘は軽業師の飼い犬を使って
その居場所を突き止めるが…。
「かる業武太郎」

ブラックの講談が、口述速記によって
形として残されたのは幸いでした。
しかしその多くが現在絶版中であり、
本書も古書もしくは
電子書籍をあたるしかありません。
Amazonで検索すると、現在も
流通中の数冊が出てくるのですが、
それは二代目ブラック(現代の人・
初代とは無関係)の著作です。
悲しいことに青空文庫にも
作品が取り上げられていません。
もし本書作品
4篇以外を今すぐ読むとすれば、
国立国会図書館デジタルコレクションを
あたるしかなさそうです。
快楽亭ブラック再評価の道のりは
険しいというしかありません。

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今日のオススメ!

(2021.12.14)

ArtTowerによるPixabayからの画像

【国会図書館デジタルコレクション】
 快楽亭ブラック作品
「英國龍動劇塲土産」
「流の暁」
「薔薇娘」
「車中の毒針」
「切なる罪」
「剣の刃渡」
「孤兒 英國實話」
「神田武太郎 探偵實話」

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