「図書館に訊け!」(井上真琴)

図書館を、徹底的に使い倒すための指南書

「図書館に訊け!」(井上真琴)
 ちくま新書

図書館は人類の知的遺産を
継承するために生き延びてきた
文化制度であり、
歴史と伝統の息づいた
機関なのである。
まずは等身大のあなたのままで、
体当たりしてみれば
それで十分なのである。
成長に応じて
図書館は応えてくれる…。

本書「はじめに」から抜粋しました。
本書はまさに
「広大無辺の学術資料・
学術情報の地平が広がっている」
図書館を、徹底的に使い倒すための
指南書となっているのです。

【本書の章立て一覧】
第1章
 図書館の正体と図書館への招待
第2章
 資料の多様性と評価の視点を知ろう
第3章
 どうやって資料にたどりつくのか⑴
第4章
 どうやって資料にたどりつくのか⑵
第5章
 レファレンス・サービスを行使せよ
第6章
 資料は世界を巡り、
  利用者も世界を巡る

第1章で著者は、
図書館が利用しにくい現実
(筆者の言葉を借りると
「図書館がゴーマンである理由」)を
提示するとともに、
図書館の意義、そして世の中には、
多様な図書館の形態が
存在していることを詳説しています。
ここには図書館において
「貸す側」ではなく
「借りる側」に立っての論旨の展開に、
ただただ頷くばかりです。

第2章・第3章・第4章では、
図書館の資料の多様性を
懇切丁寧に語り、
さらにそうした資料への
アクセスのスキルについても
詳しく教えています。
ネット検索で済ましてしまい、
図書館を利用しない大学生が
増えているようですが、
ネットではたどり着けない情報が
膨大に所蔵されていることが、
一つ一つ丁寧に記されています。
図書館の価値を再認識できるはずです。
ここが図書館利活用の
第一歩といえる部分です。

そして第5章・第6章では、著者は
レファレンス・サービスについてふれ、
図書館だけでなく、
「図書館員の利用の仕方」についても
書き添えています。
さらにはそうしたアクションによって、
世界中の情報にアクセスできる
可能性についても言及しています。
ここが図書館利活用
プロ編といったところでしょうか。

「本を読まなくても
ネットがあれば十分」。
今の子どもたち(だけでなく、
大学生や大人も)はそう考えています。
小中学校での
「総合的な学習の時間」の実施、
そして学校へのICT機器の普及が
進んだことにより、
子どもたちのネット検索の機会が
非常に増えました。
ネット検索のおかげで、
かつては考えられなかったような
学習活動が展開できるようになったのは
事実です。
それが反面、図書館利用の軽視、
そしてさらには読書の軽視に
つながっているのではないかという
危惧を覚えます。

確かにネット上には
無限とも言える情報が存在しています。
しかしそれらはどうしても
底の浅い情報にならざるを得ません。
物事を「深く」調べるためには
文献資料は必要不可欠であることが、
本書を読めば納得できるはずです。

筆者は巻末において、
「利用者の視点から資料や情報に接する
楽しさを伝える」ために
本書を著したと述べています。
本書を読めば、間違いなく
図書館を利用したくなること
請け合いです。
高校生、大学生に読んでほしい一冊です。
そしてここから
読書への扉を開いてほしいと思います。

※本書を再読し、
 図書館に行きたいという思いが
 強くなりました。
 ただ、私の地域の図書館は、
 利用が甚だ不便(最大の理由は
 車社会の田舎でありながら駐車場が
 4台分のみであること)であり、
 ここ数年利用していません。
 なんとかして私も図書館を
 利用し尽くしたいと考えます。

〔図書館に関わる本〕
図書館利用については、当サイトでも
これまで紹介してきました。
新しい図書館の在り方としては、この
「沸騰!図書館」(樋渡啓祐)
示唆に富んでいます。

「生きるための図書館」(竹内悊)も、
図書館の意義や使命について、
改めて考えさせられる内容と
なっています。一読の価値ありです。

「図書館に行きたい」という気持ちを
かき立てられる一冊は、何といっても
「TOKYO図書館紀行」です。
ビジュアルで美しい図書館が
数多く紹介されています。
本書を読んで、
図書館巡りをしてみましょう。

中高生向けの
岩波ジュニア新書であれば、
この二冊でしょうか。
「読みたい心に火をつけろ!」(木下通子)
「みんなでつくろう学校図書館」
(成田康子)

こうした本をきっかけに、
中学生・高校生たちが学校図書館、
さらには地域の図書館に
足を運ぶようになるなら、
世の中はもっとよくなるのではないかと
思う次第です。

(2022.7.26)

David MarkによるPixabayからの画像

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