「植物はすごい」(田中修)

なにが「すごい」のか?「防衛システム」が「すごい」のです!

「植物はすごい」(田中修)中公新書

「植物はすごい」中公新書

植物たちは、
根から吸った水と空気中の
二酸化炭素を材料にして、
太陽の光を利用して、
葉っぱでデンプンなどを
つくっています。
ところが、植物たちの
小さな葉がしている反応を、
私たち人間は真似することが
できないのです…。

「はじめに」の一節を抜粋しました。
科学が進歩した現代においても、
植物の行う光合成を
再現することはできないのです。
だから植物は「すごい」。
そうした植物の「すごい」が、
本書には満ち満ちています。

〔本書の章立て一覧〕
はじめに
第1章 自分のからだは、自分で守る
第2章 味は、防衛手段!
第3章 病気になりたくない!
第4章 食べつくされたくない!
第5章
 やさしくない太陽に抗して、生きる
第6章 逆境に生きるしくみ
第7章 次の世代へ命をつなぐしくみ
おわりに
参考文献

何が「すごい」のか?
それはすべて「生き残り戦略」のための
「防衛システム」にあります。
植物は動かない以上、
動く動物に食べられるという
宿命を負います。
しかしそれを前提としながら
多面的重層的な
「防衛システム」を構築し、
運用しているのです。
第一章では、
「少しぐらい食べられても生き残れる
戦略」として、
動物に比べて格段に早い
「成長システム」、
動かなくても必要な栄養を
自分でまかなえる「光合成システム」、
そして
「食べられないようにする戦略」として、
「トゲ」という
「対動物防衛システム」など、
いろいろな植物の例を挙げて
説明しています。
植物の防衛力は「すごい」のでした。

第二章では、
食べられないようにするための
「味」による防衛戦術について
紹介されています。
クリやカキの「渋み」、
ダイコンやワサビ、コショウの「辛み」、
ゴーヤーの「苦み」、
レモンをはじめとする
柑橘類の「酸味」は、
すべて外敵から
身を守るためだったとは!
植物の「味」による防衛力もまた
「すごい」のです
(その防衛システムとしての「味」を、
利用したり味わったりしている人間も
「すごい」のですが)。

第三章は「ネバネバ」と「香り」。
こちらは対動物用ではなく
「対細菌用防衛システム」です。
目に見えない細菌やウイルスに対して、
人間はいたって無力ですが、
植物は有効な対策を
講じているのでした。
やはり植物は「すごい」のです。

さらに第四章は「毒」。
植物の「毒」といえば、
せいぜいトリカブトぐらいしか
思いつかないのですが、
実は多くの植物が
「毒」を持っているとのこと。
なんと身近なところでは
アジサイの葉も毒を持っていたのです。
確かにアジサイの葉は
いつ見ても綺麗で
虫食いがほとんどない!
そしてギンナンにも毒があったとは
(自分ではほとんど食べないので
知らなかった)!
植物は「強い」いや「すごい」のです。

第五章第六章は、環境への耐性です。
第五章は「対紫外線防衛システム」、
第六章は
「対高温対乾燥用防衛システム」が
紹介されています。
植物は与えられた環境に
もっとも適した方法で
生きのびようとする
「すごさ」を持っているのです。

そして最終の第七章では
「遺伝子防衛システム」とでもいえば
いいのでしょうか、
確実に自らの遺伝子を
次世代に伝えるためのしくみについて
述べられています。
またしても植物は「すごい」のでした。

植物を見る目が確実に変わります。
なすすべもなく食べられているわけでは
なかったのです。
したたかに「防衛システム」を発動させ、
戦略的に子孫を残していたのです。
それに比べて私たちは…、
なすすべもなく
賃金は低水準で抑えられ、
なすすべもなく
増税されようとして、
なすすべもなく
物価高に晒されています。
私たちも植物に負けないように
「防衛システム」を強化しなければ!

(2023.2.7)

eko pramonoによるPixabayからの画像

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