「ピッピ 船にのる」(リンドグレーン)

自由奔放に振る舞うピッピの行動原理を味わう

「ピッピ 船にのる」
(リンドグレーン/大塚勇三訳)
 岩波少年文庫

「ピッピ、ナガクツシタ、
ばんざい!」波止場にいる
人たちがさけびました。
「渡り板をひきあげろ」と、
ナガクツシタ船長が
どなりました。
ホッペトッサ号は、
世界のむこうの、
見知らぬ土地へ、
まさに出港しようとしました。
ですが…。

読みました。
リンドグレーンのピッピ・シリーズ
第二作です。
カバー裏には「小学3・4年以上」と
余計な文言が載っていますが、
優れた児童文学は
大人が読んでも面白いのです。
今回ピッピは、
どんなことをやってのけるのか?

〔主要登場人物〕
ピッピ

…ごたごた荘に一人で住んでいる少女。
 性格は破天荒。
ニルソン氏…ピッピの飼い猿。
…ピッピの飼い馬。
トミー・セッテルグレーン
…ピッピの住む家の近くの家の男の子。
アンニカ・セッテルグレーン
…トミーの妹。
「先生」
…トミーやアンニカの通う学校の先生。
ウッラ
…トミーやアンニカと同じ学校に通う
 少女。
ブロムステルルンド
…馬車馬を虐待していた男。
ラバン
…町のならず者。
エフライム
…ピッピの父親。
 海で遭難、島に流れ着き、
 土民の国の酋長となっていた。
 「ホッペトッサ号」船長。
フリドルフ
…エフライムの忠実な部下。

〔本書の構成〕
1 ピッピは、
  まだごたごた荘にすんでいる
2 ピッピ、買物にいく
3 ピッピ手紙をかき、学校にいく、
  …でも、ちょっとだけ
4 ピッピ、遠足にいく
5 ピッピ、市にいく
6 ピッピ、難破する
7 すばらしいお客
8 ピッピ、
  おわかれパーティーをひらく
9 ピッピ、船にのる

第一作「長くつ下のピッピ」で、
その味わいどころ3点を
以下のように記しました。
①逆境を解しない幸福なピッピ
②最強の女の子としてのピッピ
③奔放な自由人としてのピッピ

基本的には本作品の味わいどころも
同一なのですが、
中でも③が強烈に前面に出ている
作品といえるでしょう。
自由奔放に振る舞うピッピの
行動原理こそ、本作品の
味わいどころとなっているのです。

本作品の味わいどころ①
やってみたい!思いつきを即実行

自由奔放に振る舞う
その行動原理の一つは、
思いつきを迷わず
即実行できるということなのでしょう。
その傾向が最も強く表れているのは
第2章です。
町に向かうその途中で、
「道のわきのみぞ」
(おそらくは側溝か用水路と思われる)に
服を着たまま入り、
潜水艦のように潜って遊ぶ。
婦人服店でマネキン人形の腕を
もぎ取り、それを迷わず購入する。
お菓子屋ではキャンデーを18キロ、
いろいろな飴を3キロずつ、
棒つきキャンデー60本、
キャラメル72箱、
棒チョコ103本も買って、
町の子どもたちに振る舞う。
やはりハチャメチャです。

それがピッピの場合、
なぜか当たり前のように感じられるから
素敵なのです。
側溝で泳ぐなど、
キャラクターがちょっと違っただけで
狂人にしか見えなくなる
可能性があります。
大量のお菓子の購入も、
一歩間違えるとイヤミな金持ちの
「超大人買い」にならなくもありません。
作者・リンドグレーンの創り上げた
ピッピだからこそ、そうした
破天荒な行動も絵になるのです。
この、思いつきを即実行する
ピッピの姿こそ、
本作品の第一の味わいどころなのです。
しっかりと味わいましょう。

本作品の味わいどころ②
やってみたい!縛られない生き方

自由奔放に振る舞う
その行動原理の二つめは、
何ものにも縛られない生き方が
できるということでしょう。
第4章を読むとよくわかります。
遠足の目的地近くに住んでいる
ウッラの家での振る舞いは、
まともな大人であれば
激怒することばかりです。
振る舞われた飲み物を
一人で次から次へと飲み干す。
お菓子も食べたいだけ食べ尽くす。
テーブル・マナーも
まったく意識していません。
まさに野生児としか
いいようのないものです。
でも本来、おやつを楽しむというのは
こういうことかもしれません。
常識やマナーにまったく縛られず、
誰の目も気にしない。
それもやはりピッピだからこそ
自然体として読み手の目に映るのです。
この、何ものにも縛られない
ピッピの生き方こそ、本作品の
第二の味わいどころとなるのです。
じっくりと味わいましょう。

本作品の味わいどころ③
やってみたい!限りなく膨らむ夢

自由奔放に振る舞う
その行動原理の三つめは、
夢をどこまでも大きく膨らませる
その考え方でしょう。
第8章で語られる夢は、
もちろん非現実的です。
一年のうち半年は
黒人の国でお姫様として生活し、
残り半年は船で世界中を旅する。
これも虚構の小説世界であっても、
ピッピ以外のキャラクターが
口にしたなら
筋書きが破綻するでしょう。
この、際限なく夢を膨らませる
ピッピの想像力こそ、本作品の最大の
味わいどころとなっているのです。
たっぷりと味わいましょう。

ピッピは、
大人が見てすばらしい女の子では
決してありません。
子どもが接して素敵だと思える
女の子なのでしょう。
もちろんピッピに憧れた子どもが、
ピッピと同じことをしようとしたら、
大人たちは指導しなければ
ならなくなるはずです。
それが現実です。
でも、ピッピの世界、そして
ピッピの生き方を十分に知りつつ、
少しずつ現実世界を理解していく、
それが大切なのではないかと
思うのです。
無思考無批判のまま常識や世間体に
縛られていくのではなく、
自由奔放な魂を堅持しつつ
より正しい生き方・在り方を
模索して生きていくことができる。
それこそがピッピ・シリーズに
子どもたちが接する意味ではないかと
思うのです。

今からでも遅くはありません。
ピッピを読まずに
大人になってしまったあなた、
ぜひ本作品をご賞味ください。

(2025.8.27)

〔ピッピ・岩波少年文庫〕

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