「海島冐檢奇譚 海底軍艦」(押川春浪)①

エンターテインメントをてんこ盛り

「海島冐檢奇譚 海底軍艦」(押川春浪)
(「少年小説大系第2巻押川春浪集」)
 三一書房

「少年小説大系第2巻押川春浪集」

「海島冐檢奇譚 海底軍艦」(押川春浪)
 青空文庫

「海島冐檢奇譚 海底軍艦」青空文庫

日本への帰国の途についた
「私」の乗った船は、
インド洋で海賊船の襲撃を受け、
あえなく沈没する。
「私」が漂着した無人島には、
いるはずのない
日本人の集団があった。
彼らは秘密裏に
新型潜水軍艦「海底軍艦」を
開発・建造していたのだ…。

面白い、面白すぎます。
タイトルだけから想像すると
戦争物のようなイメージですが、
ありとあらゆる
エンターテインメントを
てんこ盛りにしたような
娯楽作品なのです。

まずは海賊船の襲撃、
船の沈没、そして漂流。
「宝島」を彷彿とさせる海賊船・海蛇丸が
豪華客船を襲撃。
客船は「タイタニック」のごとく
沈没します。
そしてともに乗船していた
知人の息子・日出雄少年と「私」は、
「十五少年漂流記」ばりの漂流を
味わうのです。

そして無人島への漂着、探検、
海軍の秘密小隊との出会い。
流れ着いた無人島では
「ロビンソン・クルーソー」を思わせる
サバイバル生活。
B級アメリカ映画よろしく、
密林の中へ踏み込むと
ゴリラに襲われる。
危機一髪、銃声が轟き、
ゴリラは倒れる。
スパイ映画と思いきや、
救ってくれたのは日本海軍兵。

さらには海軍小隊の
秘密の全貌が明らかになります。
秘密造船所でつくられているのは
ジュール・ヴェルヌもびっくりの
潜水航行可能な軍艦。
それも動力は12種類の秘密の
薬液の混合から生じるエネルギー。
怪しげな魔法なのか
サイエンスフィクションなのか。

その一方で、無人島での
楽しい生活も描かれます。
猛犬稲妻と日出雄少年は
パトラッシュとネロ並みの
強い絆で結ばれます。
余暇はやっぱり野球、
それも9種の魔球を繰り出す投手まで
擁する海軍小隊、恐るべし。

登場するのは
新型軍艦だけではありません。
「旋廻圓鋸機」と「自轉伐木鉞」を装備し、
密林の大木をばっさばっさと切り倒し、
どんな斜面も登ってしまう
スーパー12輪車「冒険鉄車」なる
超近代的アイテムが現れたかと思うと、
その窮地を救うのは手作りの軽気球。
まさに陸海空、
すべてを制覇しています。

ついに5年の歳月を経て、
日本海軍の海底軍艦完成。
その最初の敵は
何とあのにっくき海蛇丸。
海賊船団を完膚なきまでたたきつぶし、
大団円を迎えます。

こんな面白すぎる小説が
発表されたのは明治33年。
「吾輩は猫である」より
5年も早いのです。
本作品が明治の文壇で
正当に評価されていれば、
日本文学はもっと面白いものに
なっていたのではないかと思います。

〔青空文庫〕
「海島冐檢奇譚 海底軍艦」(押川春浪)

〔「少年小説大系第2巻押川春浪集」〕
海底軍艦
幽霊島
塔中の怪
空中大飛行艇
続空中大飛行艇
黄金の腕輪
人外魔境
幽霊小家
怪人鉄塔
樹上の侠士と美人
頑強壮漢

〔関連記事:押川春浪〕

(2018.10.13)

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