「離魂病」（横溝正史） | 書評：オススメ本！ラバン船長のブックセイリング･こんな本を読んでみませんか

人形佐七捕物帳016

瀬戸際からの一発逆転劇、佐七はどう動く？

「離魂病」（横溝正史）
（「完本人形佐七捕物帳一」）
　春陽堂書店

最近、佐七の様子がおかしいと、
辰･豆六はお粂に訴える。
どうやら離魂病らしいのだ。
三人は佐七のあとを尾行し、
小料理屋にたどり着く。
そこで佐七が会っていたのは
お絹という年増女だった。
逆上するお粂だったが、
その佐七は…。

その佐七は、実は贋物であることが
すぐに明かされます。
横溝正史の人形佐七捕物帳の
一篇である本作品、
佐七と瓜二つの男が
佐七になりすまして悪事を働き、
佐七は与力･神崎に捕らえられるという
衝撃的な筋書きなのです。

【捕物帳〇一六｢離魂病｣】
伊豆屋与兵衛
…大店質屋の主人。故人。
金蔵
…与兵衛の甥で養子。与兵衛亡き後、
　店を切り盛りしている。
お絹
…与兵衛の妻。金蔵の養母。
　佐七(とよく似た男)に殺害される。
お由･お杉
…伊豆屋の女中。
　佐七がお絹を殺害したと証言する。
お役者紋三
…佐七と瓜二つの男。刺青あり。
花歌留多のお勝
…かつて佐七に捕らえられた
　贋金づくりの一味。｢音羽の猫｣登場。
新どん
…小料理屋･ひさご屋の男衆。
神崎甚五郎
…八丁堀の与力。
このしろ親分
…このしろ吉兵衛。十手持ち。
　佐七と懇意。
辰五郎･豆六…佐七の乾分。
お粂…佐七の女房。
佐七…人形佐七と呼ばれる御用聞き。

本作品の味わいどころ①
偽佐七現る、正体はいったい何者？
偽佐七、といっても正体は
怪人二十面相のような
変装の名手などではありません。
たまたま似ているだけなのです。
その贋物が佐七になりすまして
悪さをするというよくある手口です。
それを｢離魂病｣(魂が抜け出して
動き回るドッペルゲンガー状態)と
結びつけて
筋書きをおもしろくするのです。
さすがは横溝です。

なりすました偽佐七の悪戯は、
蕎麦屋で勘定を払うといった
お節介的行為から始まり、
若い女とデレデレして歩くといった
佐七にありがちな行動を経て、
上司の神崎に会いに行くなど、
次第に図太くなってくるのです。
そして白昼、
佐七宅に堂々と上がり込み、
お粂から二両もの金子を
まったく疑われずに
もらい受けるのですから、
似ているどころか瓜二つなのでしょう。
当然、それで終わるはずはなく、
殺人事件を引き起こすのです。
厄介な犯罪者･偽佐七、
正体はいったい何者？

本作品の味わいどころ②
偽佐七現る、佐七一家はどう動く？
佐七捕縛という衝撃的な事態に
見舞われた佐七一家。
辰･豆六･お粂の三人が
行動を開始するのですが…、
やはり偽佐七に翻弄されてしまいます。
真犯人を捕まえるつもりが、
逆に真犯人の罠に
はまってしまうのです。
やはり辰や豆六、お粂には
荷が重かったか？
第十六話目にして早くも訪れた
最大級の危機に、佐七一家はどう動く？

本作品の味わいどころ③
偽佐七現る、佐七本人はどう動く？
で、佐七本人は何をやっているのか？
事件前は分けがわからず
腑抜けたような表情でいたために
｢離魂病｣を疑われ、
贋物を捕まえる前に事件を起こされて
濡れ衣を着せられるのです。
神崎に捕縛された佐七。
囚われの身でどうやって
汚名をそそぐのか？いやいや、
それで終わるはずはありません。
瀬戸際からの一発逆転劇が
はじまるのです。
佐七本人はどう動く？