「西の魔女が死んだ」(梨木香歩)②

「不登校」という問題

「西の魔女が死んだ」(梨木香歩)新潮文庫

不登校。
学校社会において、今
とても大きな問題となっています。
私の住む地域でも、
ほとんどの学校に
数名ずつ不登校生徒が存在しています。
日本全国ではいったい
どのくらいの数に
なるものなのでしょうか。
「学校なんて行く必要はない」と
言い切るのは簡単です。
しかし都市部と違い、
地方は生き方の選択肢が少なく、
不登校に陥った後の進路が
きわめて限定的となります。
そのため中学卒業後に
大きなハンディキャップを
背負い込むケースが少なくないのです。
不登校の事情は一人一人異なり、
有効な解決策を
打ち出せていない状態です。

さて、不登校の問題を扱った本書を、
すでに私は何度も読み返しています。
本書には、こうすれば解決できるという
具体策はありませんが、
一つの可能性を示唆するようなものが
いくつか散りばめられています。
おばあちゃんのまいに対する姿勢は、
そのまま不登校の子どもたちの
周囲にいる大人の果たすべき役割に
通じるのではないかと思えるのです。
私は次の二つに注目しています。

一つは、
魔女修行を受けるまいに対して、
おばあちゃんがはじめに教えたこと、
「早寝早起き。
 食事をしっかりとり、よく運動し、
 規則正しい生活をする」

難色を示したまいに、
おばあちゃんは優しく諭します。
「いちばん価値のあるもの、
 欲しいものは、
 いちばん難しい試練を
 乗り越えないと
 得られないものかもしれませんよ」

もう一つは、
転校しても根本的な問題は
解決しないという
まいに対してのおばあちゃんの言葉、
「自分が楽に生きられる場所を
 求めたからといって、
 後ろめたく思う必要はありませんよ。
 シロクマがハワイより
 北極で生きる方を選んだからといって、
 だれがシロクマを責めますか」

基本的な生活習慣を
大切にさせることと
子どもに寄り添うこと。
どちらも簡単そうに見えて、
なかなかできていないことでは
ないでしょうか。

ネットや情報端末の普及によって、
規則正しい生活は、
子どもたちにとって
困難な状況になりつつあります。
それを躾けることに
限界を感じている
親御さんも多いと思われます。

「子どもに寄り添うこと」も
難しい一面があります。
「子どもの言いなりになること」と、
混同しがちになっている
傾向が見られるような気がします。

不登校の問題は、
そのまま子どもたちを支えるべき
私たち大人の問題でも
あると思うのです。
大人の知恵を持ち寄って、
解決に近づく努力を
していきたいものです。

(2018.10.24)

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