「オズの魔法使い」(ボーム)④

夢いっぱいのオズの世界を見事に構築した映画

「オズの魔法使」(Blu-ray:1939年アメリカ映画)

オズについて語るなら、
1939年公開のハリウッド映画を
無視するわけにはいきません。
かかし・ブリキマン・ライオンの
強烈やキャラクターを、
この映画によって
植え付けられたという人が
多いのではないでしょうか。

文学作品が映画化されると、
多くの場合、
なにがしかの不満が残るものです。
原作を忠実に再現するなど、
不可能だからです。
もちろんこの映画も同様で、
原作の忠実な再現など
目指していません。
しかし、
夢いっぱいのオズの世界を、
これだけ構築できているのは
映画ならではだと思うのです。

当然、
原作の筋書きのいくつかは
見事にカットされています。
一つはオズと4人のやりとり。
何日もかかっていた
オズとの接見部分は
すっきりと整理されています。
もう一つは
オズが正体を見破られてから
終末までの部分。
原作では
かかし・ブリキマン・ライオンの
落ち着く先が
丁寧に描かれていますが、
大胆にすべて削られています。

100分という
尺の中に収めるだけでなく、
いろいろな場面に歌が挿入される
ミュージカル映画ですので、
展開は
スピーディでなくてはなりません。
脚本家はかなり難儀したことでしょう。

一方で、
原作にない部分が
付け加えられています。
原作と異なり、オズの世界は
ドロシーが見た夢という設定になり、
冒頭にかかし・ブリキマン・ライオン、
そして悪い魔女のモデルとなる人物
(映画ではそれぞれ二役)が
登場するのです。
この部分が物語を
一層面白くしています。

こうした原作との違いが、
本作品では見事に成功しています。
「面白さ」という意味では、
原作を上回っているともいえます
(「童話」と「ミュージカル映画」を
単純に比較してはいけないのですが)。

80年前の映画ですから、
現代の映画を見慣れた目で見ると、
特撮部分がどうしても
稚拙に見えてしまいます。
しかし、
当時としては破格の制作費を
投入した一大スペクタル映画でした。
私たちも当時の目線に降りて
じっくり鑑賞すべきでしょう。

かつてNHKで放送したものを
VHSのビデオテープに録画し、
すり切れるほど見たのですが、
DVDを購入し、
今またBlu-rayを買ってしまいました。
見るたびに
新しい発見のある映画です。
名作といわれる所以です。

(2019.1.25)

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