「本・子ども・絵本」(中川李枝子)

本の素晴らしさ・子どもの素晴らしさ・絵本の素晴らしさ

「本・子ども・絵本」(中川李枝子)文春文庫

私のつれあいが絵本好きなもので、
我が家には絵本がたくさんあります。
二人の子どもも
成人してしまいましたので、
それらを書棚から取り出すことも
少なくなりました。
でも、ときどき取り出して
眺める絵本の一つが「ぐりとぐら」。
その作者・中川李枝子さんの
著したエッセイが本書です。

表題が示すとおり、
本を愛し、子どもを愛し、絵本を愛した
著者の人柄が、
一文一文から滲み出ていて、
読んでいて心が洗われる思いでした。
特に私の心の琴線に触れた部分を
紹介します。

「サマセット・モームは
 「読書の習慣を持つ人は、
 人生の殆どすべての不幸から
 あなたを守る避難所ができる」と
 述べています。」

モームの言葉を引用していますが、
それはそのまま
著者の考えなのでしょう。
読書という行為の有用性を
端的に表しているといえます。

「読書の喜びは
 精神の自由あってのもの、
 強制されたり
 お節介を受けたりして
 得るものではありません。」

考えてみれば、私たちが
本に親しむきっかけというのは
決して他者から強制された結果では
なかったのです。
私たち大人の役割は、
子どもたちが本を自由に選べる
環境を整えることなのかもしれません。

「どんな絵本愛好家でも、
 絵本を楽しむ点では
 幼児にかなわないでしょう。
 感性が違います。」

絵本を最も味わえるのは
幼児期なのでしょう。
だからこそ、その時期に
絵本との接点が必要なのです。
最近は子育てに
スマホを活用する事例が
増えているようですが、
もっともっと絵本に親しませることは
できないものかと考えてしまいます
(子育てにスマホを活用することを
否定はしませんが)。

「読書の入り口である絵本はまた、
 人生の入り口のような気がします。
 なぜなら、
 生きることは素晴らしいと、
 子どもひとりひとりに
 しっかりおぼえおませる
 チャンスだからです。」

絵本の物語によって、
「自分のまわりに
いろいろな人がいるということ」
「自分にもこんなに
いいところがあるということ」
「自分のいる世界は
まんざらでもないということ」、
それらにうっすらとでも
気付くきっかけになるとすれば、
絵本は間違いなく
「人生の入り口」になるでしょう。

読み終えれば、
読み手である私たちも
本の素晴らしさ、
子どもの素晴らしさ、
絵本の素晴らしさを、
再認識させられます。
幸せな気持ちになれる一冊です。
大人のあなたにお薦めします。

※本書は1982年に出版され、
 2013年に改訂版が出され、
 2018年に貴重な写真資料が
 加えられて文庫化されたものです。

(2019.1.28)

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