「砂漠化ってなんだろう」(根本正之)

そんな単純なものではありませんでした

「砂漠化ってなんだろう」(根本正之)岩波ジュニア新書

「砂漠」というと、
見渡す限りサラサラの砂だらけの、
アラビアンナイトの風景を
想像してしまいます。
そんな単純なものでは
ありませんでした。

広義の「砂漠」とは、
「植物がまばらか、
ほとんど存在しない
荒原の一部」なのだそうです。
そのため、鉱山や極地で
植物がきわめて生育しにくい地域も
「高山砂漠」「極地砂漠」、
植物の少ない都市なども
「都市砂漠」として
とらえるのだそうです。

「砂漠化の進行」というと、
「大陸の乾燥地域の問題だろう」と
考えていました。
そんな単純なものでは
ありませんでした。

湿潤地域でも
砂漠化は起こっているのです。
森林の伐採や農地の拡大等が進み、
表土が水による浸食を受けると、
乾燥地域でなくとも
土地の荒廃が進行します。
驚いたのは、日本の足尾銅山で、
亜硫酸ガスによって
森林のほとんどが枯死していたこと。
足尾銅山は鉱毒による水質汚染だけが
問題化していたのでは
なかったのでした。

「砂漠化を止める」というと、
「木を植えればいい」と
思ってしまいます。
そんな単純なものでは
ありませんでした。

そもそも「砂漠」と
「砂漠化した土地」とは違うのでした。
「砂漠」はもともと
極端に植物が少ない土地であり、
そこを緑化するのは、
人間が生態系に大幅に手を入れ、
まったく新しくすることです。
一方、「砂漠化した土地」は、
元来緑が存在していた地域であり、
砂漠化の原因が
人間活動であるならば、
それを元に戻すのが
人類の責任ということになります。

「砂漠化した土地の緑化」というと、
「どこかから水を引いてくればいい」と
安易に考えていました。
そんな単純なものでは
ありませんでした。

砂漠緑化には、
塩害がつきものです。
与えた水が地表面や植物体から
蒸発散するにともない、
塩類が溶け込んでいる水が上昇し、
その塩類が地表面に集積し、
結果的に植物が育ちにくい
環境になってしまうのです。
水をどうするかだけではなく、
除塩をどうするかが
大きな問題なのでした。

やはり岩波ジュニア新書。
素晴らしい内容です。
わからなかったことが
しっかりわかるようになる。
生態系について学習し終わった
中学校3年生、
そして高校生にお薦めです。

※参考までに
 1章 地球のあちこちで
    砂漠化がすすんでいる!
 2章 砂漠ってどんなところ?
 3章 人間活動が砂漠化を招く
 4章 湿潤地域でも
    「砂漠化」はおこるか?
 5章 砂漠化した土地の緑化を考える

(2019.2.22)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA