「そばかすの少年」(ポーター)②

自由の国アメリカでもそうだったとは

「そばかすの少年」(ポーター/鹿田昌美訳)
 光文社古典新訳文庫

昨日本書を取り上げ、
「小難しいことを言わずに、
本書を読んで
感動にどっぷり浸かって下さい」と
書きました。
でも、ちょっとだけ
考えてしまうことがあります。

物語の終末、
そばかすは重傷を負い、
病院に運ばれます。
幸い怪我は致命傷には
いたりませんでした。
体力も十分ありました。
しかし、そばかすは回復しません。
それは彼が生よりも
死を望んでいたからです。

その理由は、
生きていても自分はエンジェルと
結ばれることは絶対にないと
考えているからなのです。
それは父親代わりの
マクリーンも知っています。
「あのお嬢さんはすべてを持っている。
 そしてあの子にはなにもない。
 そのことをあの子は、
 誰よりもはっきりと
 わかっているのです。
 あの子を救うために必要なのが
 エンジェルということになれば、
 あの子は死を選ぶほかに
 道がありません。」

エンジェル自身はそばかすを愛し、
そばかすに愛を告白します。
そしてエンジェルの父親も
そばかすを高く評価し、
娘の気持ちを理解し、
尊重しているのです。
婿として事業を継がせてもいいとも
考えているのです。
にもかかわらず、
そばかすもマクリーンも、
財産もなく右手もない男子と、
裕福な事業家の娘は
結婚できないと信じているのです。

病床にあるそばかすに代わって、
エンジェルは
彼の出生を探るために奔走します。
その結果、判明した事実とは…。

何とそばかすは
アイルランドの貴族の子であり、
遺産を相続すると
マクリーンやエンジェルの父親よりも
財産を持っていることがわかるという、
夢のような設定です。
何も持ち合わせていない貧しい子が、
実は大金持ちの子息であったという、
いかにもアメリカ人好みの
夢のある話です。

でも、
財産を持っているエンジェルが、
財産はないけれども
男として必要なものを
すべて兼ね備えているそばかすと
結ばれるからこそ
美談なのではないかと、
私などは思ってしまうのです。
同じくらい財産がないと、
もしくは同じくらい社会的地位がないと、
結婚するのは不自然なのでしょうか。
一昔前の日本ならいざ知らず、
百年前とはいえ
自由の国アメリカでもそうだったとは。

いやいや、小難しいことは
やはり考えない方がいいのでしょう。

※そういえばバーネットの「小公女」も、
 屋根裏部屋に住まわされていた
 主人公セーラは、
 実は父親の莫大な財産が
 見つかるという話でした。
 アメリカ人は、
 この手の話が大好きなのでしょうか。

(2019.3.25)

CouleurによるPixabayからの画像

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