「ざんねんないきもの事典」(今泉忠明)

正確に表すと「生き物たちの残念な一面事典」

「ざんねんないきもの事典」
(今泉忠明監修)高橋書店

勤務校の図書室で見つけた1冊です。
ペラペラとめくってみると、
1ページに1種類ずつ、いろいろな
「ざんねんないきもの」について
解説されています。
「ざんねんな生きもの」
というくらいですから、
さぞかしマニアックな生物が
登場するかと思えば、
ダチョウ、カバ、ホタル、ウナギ、…。
ごく普通の生き物たちです。
つまり、本書は正確に表すと、
「生き物たちの残念な一面事典」
ということになるでしょうか。

各エピソードのタイトルから
興味をそそられます。
「ダチョウは脳みそが目玉より小さい」
「カバのお肌は超弱い」
「ウォンバットのうんこは四角い」
「サイの角はただのいぼ」

そしてイラストが絶妙です。
1ページの6割くらいが
イラストで占められています。
このイラストを見るだけでも
十分癒やされます。
これなら幼児でも
楽しむことが出来るでしょう。

解説文も簡潔で、
わかりやすくかつ面白く
まとめられています。
漢字にはふりがなが振られているため、
小学生でも読むことができます。

さらに各ページの下3行に
まとめられたプロフィール。
「名前」「分類」「生息地」「大きさ」
「とくちょう」が記載され、
小学生の調べ学習にも使えそうです。

何よりもページをめくりながら
気軽に楽しめることが特徴でしょう。
学校図書館にこうした1冊があり、
子どもたちが本書を手にし、
動物の世界に興味・関心を持つ。
そのことが大切だと思うのです。
単なる雑学にすぎない、と
いってしまえば
それまでの内容なのですが、
学問への入口としては
それで十分だと思うのです。

でも、本当に特筆すべきは、
わずか見開き7ページばかりの
「第1章ちょっぴり進化のお話」の
部分です。
ここには「進化」のしくみや考え方、
簡単な地球生物史、
進化と絶滅の関係、
人間の進化と未来について、
小学生にもわかりやすく
解説されています。
中学校2年生の「生物の歴史」、
中学校3年生の「生物の遺伝」の
参考図書として
ふさわしいと思われます。
私はこの部分だけで
本書を子どもたちに
ぜひ薦めたいと思ったくらいです。

学校図書館に、
そして一般の図書館に、
ぜひ置いていただきたい1冊です。

「ざんねん」なのは
活字が小ぶりであること。
老眼が進みつつある私には
ちょっとつらいと感じました。
中高年が読むことを
想定していないのでしょうから
仕方ありません…。

(2019.6.1)

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