「ベートーヴェンの交響曲」(金聖響・玉木正之)

ジャジャジャジャ~ンのその先の旋律へ

「ベートーヴェンの交響曲」
(金聖響・玉木正之)講談社現代新書

ジャジャジャジャ~ン。
ベートーヴェン運命交響曲の
出だしのつもりです。
クラシック音楽を知らない人でも、
その旋律だけは知っているでしょう。
でもその先に繋がる音楽を、
知らない人も
多いのではないでしょうか。

ベートーヴェンの音楽は、
人々を引きつける
独特の引力を持っています。
なかでも9つの交響曲は
すべてみな素晴らしい作品です。
本書は、その9曲の
ベートーヴェンの交響曲の魅力を、
一章につき一曲ずつ
解説したものなのです。

第1章「喜びにあふれた幕開け」
第2章「絶望を乗り越えた大傑作」
第3章「新時代を切り拓いた英雄」
第4章「素晴らしいリズムと躍動感」
第5章「完璧に構築された究極の構造物」
第6章「地上に舞い降りた天国」
第7章「百人百用に感動した、
    狂乱の舞踏」
第8章「ベートーヴェン本人が
    最も愛した楽曲」
第9章「大きな悟りの境地が
    聴こえてくる」
これらの小見出しが、
それぞれの作品の魅力を
端的に表しています。

そして音楽的な楽曲解説以上に、
音楽演奏の変遷や
指揮者の立場からの音楽観が
さまざまな視点から展開されているのも
本書の魅力です。

「カラヤンという指揮者も、
 フェラーリをぶっ飛ばしたり、
 自家用ジェットを操縦した人で、
 そういう運動神経がないと
 指揮者はできない」

「古い音楽を何度も
 同じようにくり返し演奏して、
 どこがおもしろいのか…
 などという人がいますが、
 とんでもない話です。
 ベートーヴェンの悪筆のおかげで、
 新しく考えられること、
 挑戦できることは
 山ほどあるのです。」

「どれだけ日本の歌を
 上手く歌えるアメリカ人でも、
 都はるみさんや五木ひろしさんの
 コブシは真似できない。
 ベートーヴェンの音楽が
 世界中の人々に受け入れられ
 それに「酔う」のは、
 このような「普遍的なコブシ」が
 挿入されているから」

クラシック音楽に
全く関心がない人が読むと
ちんぷんかんぷんだと思います。
しかし、これからクラシック音楽を
聴いてみようかと
思っている方であれば、
本書は一つのガイドブックとして
機能すると思うのです。

ベートーヴェンの交響曲は
何度聞いても飽きることがありません。
ベートーヴェンなんて「暗い!」
と言わずに、本書を読んで、ぜひ、
ジャジャジャジャ~ンの
その先の旋律に
手を伸ばしてみてください。

(2019.6.17)

WikimediaImagesによるPixabayからの画像

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