「赤毛組合」(ドイル)

「?」が渦巻くような、でも、ホームズ恐るべし

「赤毛組合」
(「シャーロック・ホームズの冒険」)
(ドイル/日暮雅通訳)光文社文庫

「シャーロック・ホームズの冒険」

「赤毛組合」
(「世界推理短編傑作集1」)
(ドイル/深町眞理子訳)創元推理文庫

「世界推理短編傑作集1」

ホームズは赤い髪の男・
ウィルスンから
奇妙な依頼を受ける。
「赤毛組合」の解散の事情を
調べて欲しいというのである。
「赤毛組合」とは
百万長者だった赤毛の男が
自分の遺産を同じく赤毛の人々に
分け与えるために
創立した団体だった…。

コナン・ドイル
シャーロック・ホームズ・シリーズ第4作、
短編では第2作となる本作品、
「赤毛組合」なる奇妙な団体の調査が
ホームズに舞い込みます。

【主要登場人物】
「わたし」(ジョン・H・ワトスン)
…語り手。医師。
 ホームズの友人であり助手。
シャーロック・ホームズ
…探偵コンサルタント。
ジェイベス・ウィルスン
…依頼人。小さな質屋の店主。
ヴィンセント・スポールディング
…ウィルスンに雇われている店員。
 「通常の半分の給料でかまわない」と
 言って採用された。
イジーキア・ホプキンズ
…「赤毛組合」設立者。
ダンカン・ロス
…「赤毛組合」入会の審査を
 受け持っていた男。
ウィリアム・モリス
…事務弁護士。
メリウェザー
…シティ・アンド・サバーバン銀行頭取。
ピーター・ジョーンズ
…スコットランド・ヤード警部。
ジョン・クレイ
…殺人犯・窃盗犯・貨幣偽造犯。
アーチー
…クレイの部下。赤毛。

今日のオススメ!

本作品の味わいどころ①
どこが事件?「赤毛組合」とは何?

初めて読む方にとっては、
頭の中に「?」が渦巻くような展開です。
乱歩・横溝ミステリに
染まっている方にとっては、
ミステリといえば「殺人事件」という
先入観が離れないため、
「このどこがいったい事件なの?」という
思いが起こるはずです。
殺人でも盗難でもなく、
「赤毛組合」なる団体の
正体を調べるという、
およそ探偵にふさわしくない(現実の
「興信所」ならありそう)依頼です。

しかしこれが本作品の
味わいどころなのです。
読み終えるまで
その味わいがわからない、
何ともいえない絶妙な風味です。
初読のときはその味がわからずとも、
再読すれば
深い味わいが楽しめるという、
悩ましい部分ではあります。
初読の際は我慢して読み進めましょう。

本作品の味わいどころ②
ホームズは何を捜査している?

まったく訳のわからない
事件であるだけでなく、
それを調査するホームズの行動も
謎に包まれています。
身分を隠して
スポールディングに接触し、
人相を確認したのかと思えば
「あいつを見るためじゃない。
あいつのズボンの膝さ」。
そしてステッキで歩道を叩く。
何のために?
さらには音楽会で音楽鑑賞。
しまいには
「サクス・コウバーグ・スクウェアの
事件は重大なんだ」。
何がどう重大なのか、
この点についても
初読ではまったく意味不明なのです。

本作品の味わいどころ③
あっと驚く事件の真相、
ホームズ恐るべし

それが終盤で
一気に面白さが爆発します。
それはここでは記すことができません。
ぜひ読んで確かめてください。
驚くべき真相が現れるとともに、
ホームズ、恐るべしと
呟かざるを得なくなるのです。

こうしてホームズ作品を読むと、
明智小五郎や金田一耕助とは違う、
英国の名探偵像が浮かんできます。
海外ミステリーには
あまり食指が動かないのですが、
ホームズは
もっと読んでみたいと思っています。

小学生のとき、
少年探偵団にはまっていました。
その延長で当然
ホームズにも手を伸ばしました。
図書室にあったのは
「バスカヴィル家の犬」
小学生向けのもので、たしか
「バスカービルの魔犬」となっていた
記憶があります。
読みましたが、
ヨーロッパの舞台背景を
どうしてもイメージできず、
その一冊きりで
ホームズとは縁がありませんでした。
それから何年たったことやら。
ドイルのホームズものではない作品
「五十年後」に接して、
ドイルの素晴らしさを再確認し、
ホームズと再会しようと
思い立ったわけです。

〔ドイル「バスカヴィル家の犬」〕

〔ドイル「五十年後」〕

〔「シャーロック・ホームズの冒険」〕
ボヘミアの醜聞
赤毛組合
花婿の正体
ボスコム谷の謎
オレンジの種五つ
唇のねじれた男
青いガーネット
まだらの紐
技師の親指
独身の貴族
緑柱石の宝冠
ぶな屋敷
注釈/解説
エッセイ「私のホーム」小林章夫

「世界推理短編傑作集1」
序 江戸川乱歩
盗まれた手紙 ポオ
人を呪わば コリンズ
安全マッチ チェーホフ
赤毛組合 ドイル
レントン館盗難事件 モリスン
医師とその妻と時計 グリーン
ダブリン事件 オルツィ
十三号独房の問題 フットレル
短篇推理小説の流れ1 戸川安宣

(2019.10.7)

Gerd AltmannによるPixabayからの画像

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