「ご近所のムシがおもしろい!」(谷本雄治)②

「ご近所のムシがおもしろい!」がおもしろい!

「ご近所のムシがおもしろい!」
(谷本雄治)岩波ジュニア新書

※本記事は、2014年8月3日に
 Yahoo!ブログに投稿したものを
 加筆訂正したものです。

最近、私の住む地域で、
マイマイガという毒蛾が
大量発生しています。
建物の壁面を見ると、
夥しい数の蛾がとまっているのです。
気持ち悪いことこの上なしです。
鱗粉に毒を含んでいるため、
しっぺ返しが怖くて
うかつに駆除することができません。
そしてあろうことか
所構わず産卵しまくります。
卵自体には毒はないのですが、
鱗粉や毛が付着していることもあり、
除去するにも躊躇してしまいます。

油断していると
窓から屋内に入り込みます。
気が付くと窓のサッシなどに
しっかりと卵を産み付けられています。
まさに狼藉の限りを
尽くしているのです。
室内のかくれたところに
生み付けられた卵塊が、
知らないうちに孵化してウジャウジャと
毛虫が這い回ることになったら…、と
気が気でありません。
憂鬱な毎日を送っています。

だから読んでみた、
というわけではないのですが、
この「ご近所のムシがおもしろい!」。
またおもしろい一冊に
出会ってしまいました。

筆者は自宅周辺にある田畑、池や川、
雑木林等を丹念に観察し、
そこに生息しているムシ
(この場合は昆虫のみならず、
蜘蛛や蛙や蛇等を含む小動物、
いわれてみると確かに名前に虫偏を
含んでいる)の生態を調べています。
その記録なのですが、
決して学術的ではありません。
好奇心いっぱいの子どもの目線で
描かれてあるのです。
これなら生物学に疎い大人でも、
いや中学生でも十分に理解できます。
これが「おもしろい」理由の一つめです。

そして筆者は
単なる自然保護主義者ではありません。
本書のいたるところに
「食べる」ことの記述が見られます。
ザリガニ、タニシならいざ知らず、
サンショウウオ、セミの幼虫、
カメムシ(あんな臭いものを!)、
ゴキブリ(あんな汚いものを!)…。
ヒトという生物が、
いかに悪食かがよくわかります。
こうした学問的ではない視点が
「おもしろい」理由の二つめです。

さらに筆者の書く文章が
「おもしろい」のです。
日本語が洗練されているのとともに、
ところどころに駄洒落を含む
ユーモアが盛り込まれています。
本書のまえがきには
「プチ生物研究家」との
自己紹介があります。
著者は生物学者ではないのか?と思って
巻末に記載されている職業を確認すると
何と新聞記者!納得です。

筆者のように、好奇心いっぱいの目で
身のまわりの自然を見つめ直すと、
それまで気が付かなかった
「おもしろさ」に出会えるのです。
そう思い、さっそく玄関を出て、
蛾を見つめると…、おおっ…、
やっぱりおもしろくありませんでした。

(2019.10.21)

ノーストラベラーさんによる写真ACからの写真

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