「教育で平和をつくる」(小松太郎)

コソボってどこ?ボスニアってどこ?

「教育で平和をつくる」(小松太郎)
 岩波ジュニア新書

コソボってどこ?ボスニアってどこ?
本書はそうした紛争後の国や地域に
教育行政官・教育アドバイザーとして
訪れた著者の奮闘の記録です。

国際教育協力という分野が
あることすら私は知りませんでした。
そして、
自分の携わっている教育という仕事が、
世界平和に直接的に貢献していることも
初めて知りました。
教育を職としている者として
恥ずかしい限りです。
「自らの力では
 容易に変えることができない
 構造的な不平等は、
 ある種の「暴力」である。
 構造的暴力は
 継続的であるという意味で、
 より深刻な問題」
であるという
冒頭の文章が印象的です。

「1 教育行政官のしごと
       ―教育を始める」

紛争の続くコソボで、
機能不全に陥った教育システムの
立て直しに奔走する
筆者の様子が記されています。
憎悪の残る街で、対立する両者の
一方に肩入れすることを避け、
徹底して中立の立場で
教育復興にあたることは
困難を極めていました。

「2 教育行政官のしごと
   ―教育と民族問題に取り組む」

再び動き始めた教育機関は、
実際にはさまざまな問題を抱えています。
その一つ一つに真摯に取り組む
筆者の奮闘の様子が記録されています。
民族問題は一朝一夕には解決しません。
粘り強い取り組みが必要であることを
強く感じました。

「3 教育アドバイザーのしごと
      ―教育をサポートする」 

舞台はコソボからボスニアへ。
ここもまた紛争復興国。
やはり民族問題が横たわり、
教育が正常に機能しません。
この地で教育アドバイザーとして
民族融和の教育を支援する
筆者の苦労が伝わってきます。

「4 教育研究者のしごと
      ―教育を〈調べる〉」

最後の章では筆者の本来のしごと、
教育研究の概要とそれに対する
筆者の考えが綴られています。

それにしても国際協力という分野の
範囲の広いこと。
貧しい国へ行って
インフラを整備することくらいしか
想像できなかった私にとって、
新鮮な驚きとともに、自分の無知への
羞恥の気持ちが湧いてきます。

そして世界を知るということは
容易ではありません。
特にこの2国のように、
日本から地理的に遠く、
また経済等の繋がりの薄い国については
関心が低くなりがちです。
大人でさえそうなのですから、
子どもたちにとっては
なおさらだと思います。
大人も子どもも、まずはこの一冊から
世界を学びませんか。

(2019.11.12)

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