「ロボッチイヌ」(獅子文六)

90年後の未来を予想した獅子文六

「ロボッチイヌ」(獅子文六)
(「ロボッチイヌ」)ちくま文庫

引退した事業家の福富は、
女性の「あらゆる特徴を
具備」するロボットを大量生産し、
売春婦の代わりをさせることを
思いつく。
依頼した玩具メーカーが
製造した製品に、
彼は「ロボッチイヌ」と命名し、
大々的に売り出すが…。

「ロボッチイヌ」はAIBOのような
犬型ロボットではありません。
性の欲求を満たしてくれる
女性ロボットなのです。
その発想自体は
決して目新しいものではありません。
しかし驚くべきは、
本作品の発表が1959年であることです。

日本のSFでは、
星新一が「セキストラ」で
性欲処理マシンを描いたのは
1957年ですが、
あくまでも「マシン」であって
「ロボット」ではありません。
眉村卓が「わがセクソイド」で
セックス専用ロボットを登場させたのは
本作品の10年後の1969年です。
SF作家の発想をはるかに
先取りしています(私は両作品を
読んではいないのですが)。

ロボッチイヌは瞬く間に売り切れ、
増産に次ぐ増産を重ねます。
最初はその手の風俗営業店が
活用していたものの、
次第に一般男性が
買い求めるようになります。
妻や恋人は浮気防止に役立つものとして
むしろ推奨するのです。
「おい、今日は少し
 晩(おそ)くなるかも知れないぜ。
 帰りに、ロボッチイヌを
 買ってくるから…」
「あら、そう、
 ゆっくり遊んでらっしゃい。
 あたしは映画でも見に行くわ」

何とも笑えます。

美人型だけでなく
娼婦型、乙女型、年増型、
オバサン型などを取りそろえたり、
第2弾のロボッチイヌが
「処女機能」搭載となるや、
その機能だけの分売を求めて
未婚女性が押しかけたり、
全編が笑い、それも
「お下劣な」笑いで満たされています。

やがて世の中の未婚男性たちが
ロボッチイヌと結婚するようになり、
未婚女性が巷に溢れ出したために
風向きが変わります。
女性の集団がロボッチイヌ製造工場を
占拠します。
彼女たちの要求は…、
ぜひ読んで確かめてみてください。

さて、半年ほど前のネット記事に、
こうしたセックスロボットについて
載っていました。
「将来的に中国で
結婚適齢期の男性が増加するにつれ、
セックスロボットの普及・使用が
一般化していく」というのです。
専門家の予想として、
「2050年には、ロボットとの性行為が
人類全体の性行為の
半分を占めることになるだろう」。
なんと獅子文六は、
90年後の中国の未来を、
その当時予想していたのでした。

(2019.11.13)

Stefan KellerによるPixabayからの画像

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA