「江戸川乱歩全集 第1巻 屋根裏の散歩者」(江戸川乱歩)

酒や女も含め、
この世のすべてに興味を持てず、
退屈な日々を送っていた郷田三郎。
彼は引っ越した新築の下宿の
押し入れの天井板が外れ、
屋根裏に通じていることに、
偶然にも気付く。
その日から彼の
「屋根裏の散歩」が始まるが…。
「屋根裏の散歩者」

世の中に退屈していた男Tは、
ある悪戯を思いつく。
付髭をつけ、
夜にそっと自宅に戻り、
妻の布団に忍び込み、
早朝には
姿を消すというものだった。
妻は深夜布団に入ってきた男が
夫とは別人らしいと気付き
困惑するが、やがて…。
「一人二役」

酒と女に散財してきた「父親」が、
自宅の庭で
何者かに殺害される。
警察は最初、
外部の犯行とみるが、
全ての容疑者の嫌疑が晴れる。
以来、残された
「おれ」「兄貴」「妹」「母親」
一家4人は、お互いがお互いを
疑うような気まずさが流れ…。
「疑惑」

アイディアやテーマが頭に浮かんだら
すぐに文字にしていたかのような
創造性の百花繚乱ともいえる
作品群です。
乱歩とはいえ駆け出しの頃は
とにかく発表して
食っていくしかなかったのでしょう。

雑誌編集の仕事に携わっている
佳子のもとに、ある原稿が届く。
そこには驚愕すべきことが
書かれてあった。
ある職人が自ら製作した
椅子の中に入りこみ、
座った人間の感触を
楽しんでいるのだという。
そしてその椅子は…。
「人間椅子」

新婚ほやほやの
山名が帰宅すると、妻・お花は
誰のものかわからぬ写真に
接吻をしていた。
夜こっそりと妻が隠した
引き出しを探ると、
そこにはやはり課長・村山の
写真があった。
嫉妬に駆られた山名は、
翌日村山に辞表をたたきつけ…。
「接吻」

名の通った作品も無名の作品も、
乱歩ならではの味わいがあります。
著作権の保護期間が終了して以来、
各出版社から乱歩作品の文庫化が
相次いでいますが、
編集方針や表紙装幀を見る限り、
乱歩に対しての深い理解や
リスペクトの感じられないものも
散見されます。
乱歩を本格的に読み始めるのであれば、
迷わずこの一冊からです。
強くお薦めしたい一冊です。

(2020.6.28)

Gerd AltmannによるPixabayからの画像

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA