中学校2年生に薦めたい本100冊vol.8 11月

舞台をイメージして~戯曲の世界

戯曲。シナリオです。
子どもたちがなかなか
自ら手を伸ばさない分野の一つです。
小説とちがい、
台詞とト書きだけで
構成されている戯曲は
舞台をイメージして読むことが
必要となります。
逆に言えば、戯曲を読むことによって
想像力が磨かれていくと私は考えます。
中学生にぜひ挑戦して欲しい戯曲8冊を
セレクトしてみました。

その1
「人間ぎらい」(モリエール)

世間知らずの
純真な青年貴族・アルセストは、
誠実すぎるがゆえ、
人間社会の曲がったことを嫌い、
世辞や追従を嫌い、
虚偽に満ちた社交界を嫌う。
そうした一方で彼は、
社交界の悪風に染まった
未亡人・セリメーヌに
恋をしてしまい…。

その2
「人形の家」(イプセン)

頭取に昇進した
ヘルメルの妻ノラは、
三人の子どもに囲まれ
幸福な日々を送っていた。
ある日、銀行員クログスタットが
訪問する。彼はその
素行の悪さから、契約を
打ち切られようとしていた。
そしてノラは
ある弱みを握られる…。

その3
「ロボット」(チャペック)

1932年、科学者ロッスムは
人造人間を開発しうる
新物質を発見、以来、
企業R・U・R社が量産化に成功、
社会には人造人間「ロボット」が
あふれ出す。
それから10年後、
全世界で一人も子どもが
生まれなくなり、
そしてロボットたちは…。

その4
「ハムレット」(シェイクスピア)

父王の亡霊が
夜な夜な城壁に現れるという
噂を耳にし、ハムレットは
自らそれを確かめる。
父の亡霊に会ったハムレットは、
父の死が実は
叔父クローディアスによる
毒殺だったと告げられる。
復讐を誓ったハムレットは
狂気を装い…。

その5
「青い鳥」(メーテルリンク)

クリスマスイヴ、
貧しい木こりの子
チルチルとミチルの部屋に
醜い年寄りの妖女が訪れた。
「これから私の欲しい青い鳥を
探しに行ってもらうよ」。
二人の子どもは
光・犬・猫・パン・砂糖たちと
不思議な旅に出る…。

その6
「夕鶴・彦市ばなし」(木下順二)

妻・つうの織り上げる反物によって
財をなした与ひょう。
その反物は
幻の「鶴の千羽織」であり、
都では千両で売れるのだという。
つうはすでに最後の一枚を
織り上げていたのだが、
悪い商人の運ずと惣どが
鶴の千羽織の噂を聞きつけ…。

その7
「米百俵」(山本有三)

戊辰戦争で焦土と化した
城下町・長岡。
その窮状を見かねた支藩より
見舞いの米百俵が届く。
配分を心待ちにする
藩士が手にしたのは
「米を売り学校を建てる」との通達。
その決定を下した
大参事・小林虎三郎の命を
いきり立つ藩士が狙う…。

その8
「父と暮らせば」(井上ひさし)

広島の原爆から三年。
自分だけが生き残ったことに
負い目を感じて
生きている美津江は、
青年・木下との恋を
遠ざけようとする。
そんな娘を思いやる父・竹造は、
「恋の応援団長」として
口を出し始める。
しかし竹造はすでにこの世に…。

1~5は海外の作品、
6~8は日本の作品で選んでみました。

1は三一致の法則
(劇中の時間で1日のうちに(「時の単一」)、
1つの場所で(「場の単一」)、
1つの行為だけが完結する(「筋の一致」)
べきであるという劇作上の制約)
が遵守されたわかりやすい形式。

2は登場人物が必要最低限に絞られ、
人間関係を捉えやすく、
場面もヘルメルの家の中を
中心に限定されていて、
情景を想像しやすいため、
まさに戯曲読解の入門として
ふさわしい作品です。

3は古典的SF戯曲。
ロボットという言葉は、
この作品から生み出されています。

4はオカルト的要素があり、
子どもたちの興味を引く作品です。
ただし内容は心理劇の色合いが強く、
ややレベルが高いかも知れません。

5は名作中の名作です。

6は民話集で
わかりやすい戯曲ばかりです。
誰もが知っている作品ですが、
作者が一ひねり効かせています。

7は時代物ですが、
山本有三は難しい言葉や言い回しを
避けたのでしょう、
中学生にも十分理解できる
作品となっています。

8は戦争ものです。
極めて重厚なテーマであるものの
決して暗くならず、
明るい作品に仕上がっているのは
井上ひさしの筆の力です。

はまると面白い戯曲の世界。
中学校2年生にぜひ薦めたい8冊です。
もちろん大人が読んでも
十分に面白いものばかりです。

(2020.9.20)

Mauricio Keller KellerによるPixabayからの画像

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