「はたらく細胞01-06」(清水茜)

いったいどんな人なのでしょう、この「人」は。

「はたらく細胞01-06」(清水茜)講談社

酸素を運ぶ「赤血球」の足下で、
突然地面が割れ、
侵入者が現れる。
それは「肺炎球菌」の一団だった。
身の危険にさらされた
「赤血球」を助けたのは
「白血球」だった。
一難が去ったが、
逃げ延びた「肺炎球菌」が
潜伏していることがわかり…。
(第1話 肺炎球菌)

あまりに面白すぎる
漫画「はたらく細胞」
漫画はほとんど読まない
(嫌いではない、one=pieceは
全巻購入している)のですが、
この漫画には、はまってしまいました。
2015年に連載が開始されるやいなや
人気を博し、複数のスピンオフ作品が
誕生するとともに、2018年には
アニメ化、舞台化までされた
驚異的な作品です。
中学校理科教師としては
見逃すわけにはいきませんでした。

それにしても、
本作品は、ある一人の人間の中の、
細胞たちを擬人化した物語です。
本作品の舞台となっている「人」は、
毎回毎回いろいろな菌やウイルスに
攻撃されているのですが、
大丈夫なのでしょうか。
心配になってきます。

【第1巻】

「第1話 肺炎球菌」
「第2話 スギ花粉アレルギー」
「第3話 インフルエンザ」
「第4話 すり傷」

第1話の「肺炎球菌」の侵入は、
繁殖する前に白血球たちに
撃破されましたので、
特に体調の変化はないはずです。
くしゃみが出て「風邪かな?」と
思った程度でしょう。
しかし「スギ花粉アレルギー」は
相当ひどそうです。
しかもその直後、
「インフルエンザ」に罹患し、
1週間ダウンしているようです。
その後の「すり傷」は
かさぶたができた程度で
たいしたことはなかったようですが。

【第2巻】

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「第5話 食中毒」
「第6話 熱中症」
「第7話 赤芽球と骨髄球」
「第8話 がん細胞(前編)」
「第9話 がん細胞(後編)」

第5話では寄生虫・アニサキスが
体内に侵入します。現代で
アニサキスの侵入を許すとすれば、
この人はどんな食生活を
送っているのでしょうか。
まあ1匹だけですので、
大事にはなっていないでしょうが。
でも第6話の熱中症は深刻です。
体内機能が一部麻痺し、
雑菌の繁殖を許しています。
輸液注射で難を逃れているのですが、
ということは少なくとも
病院に搬送されているわけです。
第8話・第9話では、
体内にがん細胞が発生するのですが、
増殖前ですので、
健康には異常はないでしょう。

【第3巻】

「第10話 血液循環」
「第11話 風邪症候群」
「第12話 胸腺細胞」
「第13話 獲得免疫」
「第14話 ニキビ」

第11話では
ライノウイルスの感染を許しましたが、
これは単なる「風邪」ですんでいます。
しかしすぐさま第13話では
ムンプスウイルスに感染し、
流行性耳下腺炎、
いわゆるおたふく風邪に罹っています。
ただし、
予防接種をしたとのことですので
軽症で済んでいるはずです。
そして第14話では
アクネ菌の攻撃を受けて
「ニキビ」ができています。
この流れを見る限り、
この舞台となっている「人」は
若い世代と考えられます。

【第4巻】

「第16話 黄色ブドウ球菌」
「第17話 デング熱」
「第18話 出血性ショック(前編)」
「第19話 出血性ショック(後編)」
「第20話 バイエル板」

第16話では
黄色ブドウ球菌の攻撃を受けます。
具体的なことは描かれていませんが、
鼻腔での増殖ですので、
もともと本人の鼻腔内にあった菌が、
免疫力低下により勢
力を得たものと考えられます。
このときいったい何があったのか?
さらには第17話で
デングウイルスに感染、
デング熱を発症します。
蚊によって媒介される感染症です。
この「人」はおそらく九州など
気温の高い地域に
住んでいらっしゃるのでしょう。
ここからが大変です。
この「人」は頭部に重大な損傷を負い、
出血多量により低体温症となるのです。
まさに命の危険が迫っていたのですが、
なんとか輸血で難を逃れます。
さらには
カンピロバクター腸炎を起こし、
食中毒(これで2回目)と
なっていますので、よほど
食い意地が張っていたのでしょう。

【第5巻】

「第20話 ピロリ菌」
「第21話 抗原変異」
「第22話 サイトカイン」
「第23話 悪玉菌」
「第24話 がん細胞Ⅱ(前編)」
「第25話 がん細胞Ⅱ(後編)

第20話ではピロリ菌の侵入を許します。
ピロリ菌に感染するくらいだから、
酒飲みの大人かなと思って調べたら、
親から子にうつることもあるのだとか。
さらに第21話では、
再びインフルエンザウイルスに感染。
今回は抗原変異を起こした
ウイルスのため、
免疫細胞たちも苦戦します。
そして第24話・第25話では
がん細胞が再び発生します。
またもや増殖前に根絶できているので、
症状は出ていないのでしょう。

【第6巻】

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「第26話 たんこぶ」
「第27話 左方移動」
「第28話 iPS細胞」
「特別編 乾癬」
「第29話 新型コロナウイルス」

第28話では大変なことになります。
この「人」は失明の危機を迎えるのです。
しかしiPS細胞を移植され、
助かっています。
調べてみると、
iPS細胞に由来する網膜色素上皮を、
網膜下へ移植する手術が
すでに行われています
(何例かはわかりませんが)ので、
この「人」は
そのうちの一人だということでしょう。
先端医療の恩恵を受けて
失明を逃れたのはよかったのですが、
この「人」はさらに
新型コロナウイルスにも
感染しています。
免疫系細胞の暴走を
招いたくらいですから、
それなりに症状も
重かったのではないかと推測できます。

ありとあらゆるウイルスや菌の侵入を
許すくらいですから、
かなり非衛生的な生活を
送っていることが考えられます。
それでいて、
なんとか免疫系細胞たちの活躍によって
生命を維持できているのですから、
それなりに強靱な身体を
持っているということでしょう。
いったいどんな人なのでしょう、
この「人」は。

(2021.12.8)

Bruno /GermanyによるPixabayからの画像

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