「私」(谷崎潤一郎)
谷崎作品を味わうなら、毒まで 「私」(谷崎潤一郎)(「潤一郎ラビリンスⅧ」)中公文庫 「私」と同室の学生三人は、寮での盗難を話題にしていた。犯人は下り藤の紋付きの羽織を着ていた。平田は当事者からの話を紹介しながら「私」の...
谷崎作品を味わうなら、毒まで 「私」(谷崎潤一郎)(「潤一郎ラビリンスⅧ」)中公文庫 「私」と同室の学生三人は、寮での盗難を話題にしていた。犯人は下り藤の紋付きの羽織を着ていた。平田は当事者からの話を紹介しながら「私」の...
読み手は否応なしに、谷崎に弄ばれる 「美食倶楽部」(谷崎潤一郎)(「潤一郎ラビリンスⅦ」)中公文庫 きっと今迄誰かが阿片を吸っていたのでしょう。御覧なさい。ここに小さな穴があります。ここから覗くと宴会の模様が残らず分かり...
紀行文、食レポ、そして…、何を描きたかったのか? 「泰淮の夜」(谷崎潤一郎)(「潤一郎ラビリンスⅥ」)中公文庫 …「花月楼、花月楼」と、私は彼女の名前を支那音で呼び続けつつ、両手の間に細長い顔を抱き挟んだ。小さな愛らしい...
むしろ、「文学的じゃれ合い」。 「魚の李太白」(谷崎潤一郎)(「潤一郎ラビリンスⅦ」)中公文庫 親友の春江から結婚祝いとして贈られた「緋ぢりめんの鯛」。着物の裏にするとよいという義母の言いつけにしたがって、桃子がそれを解...
「己」とKの、壮絶な心理的「戦闘」と「遊戯」 「前科者」(谷崎潤一郎)(「潤一郎ラビリンスⅧ」)中公文庫 己は前科者だ。そうして而も藝術家だ。己のあの忌まわしい破廉耻罪が暴露して、いよいよ監獄へ送られた時、平生己の藝術を...
完成していれば傑作長篇サスペンス小説となった… 「鮫人」(谷崎潤一郎)(「潤一郎ラビリンスⅨ」)中公文庫 服部に惚れられたと目されて居る女優は、此の劇団のソプラノ唄いの林真珠と云う少女だったのである。彼女は斯う云う社会に...
「痴人」ナオミと同じ匂いの少女グラントレン 「肉塊」「港の人々」(谷崎潤一郎)(「潤一郎ラビリンスXV」)中公文庫 映画制作を開始した吉之助は、パーティで紹介された混血の少女・グラントレンに心を奪われる。彼はこの少女こそ...
ホラー小説を書かせても、谷崎は超一級 「人面疽」(谷崎潤一郎)(「潤一郎ラビリンスⅪ」)中公文庫 場末の活動写真館で上映され、密かに話題を集めている写真「人面疽」。だが主演女優とされる歌川百合枝には、そのようなフィルムを...
「人間くさい」というよりも「谷崎くさい」 「人間が猿になった話」(谷崎潤一郎)(「潤一郎ラビリンスⅦ」)中公文庫 二階の女の一人がうなされているため、「わし」は様子を見にいく。そこには、寝ているお染の掛け布団の上に置物の...
分からないなりに咀嚼するのが本作品の味わい方 「或る調書の一節」(谷崎潤一郎)(「潤一郎ラビリンスⅧ」)中公文庫 警察の取調官(A)が殺人を犯した男(B)を取り調べる。男はこれまで窃盗や強盗など多くの前科があり、今また情...