「東京大空襲」(早乙女勝元)②

二つの非人間的なシステムの狭間で圧殺されていった

「東京大空襲」(早乙女勝元)岩波新書

なぜ2時間という短時間で、
10万人(推定)もの人間が
死ななければならなかったのか?
本書を読むと胸が痛みます。

第一の原因は、
「効率よく」敵国人の殺傷を目的とした
米軍の作戦の緻密さにあります。
大量殺戮をいとわない指揮官の起用、
綿密なシミュレーション、
レーダーの攪乱や
おとり等の周到な作戦行動、
逃げ道を与えない非道な爆撃計画、
日本家屋に適した焼夷弾の選択、
徹底した殲滅作戦等々、
ここまでやったのかと
言わざるを得ない実態が
本書には記されています。

自分たちの兵士の犠牲を極力少なくし、
最大の効果を狙う。
合理主義のアメリカらしい考え方です。
それにしてもキリスト教の教え
「汝の隣人を愛せ」という
言葉にある「隣人」は、異教徒には
あてはまらないのでしょうか。

第二の原因は、
国民の命を紙くず同然に考えている
日本政府および
日本軍の体質にあります。
都民の首都離脱を法律で規制し、
消火活動を義務づける。
焼夷弾の効果と米軍の物量を軽視し、
敢闘精神で対処せよと命じる。
国民は首都防衛のための
捨て駒に過ぎなかったのです。

加えて現実を直視しない
日本政府および日本軍の
機能不全・無為無策も、
状況の悪化に拍車をかけました。
おとりの「敵機遁走」に安心し、
「本日の敵襲はない」と楽観視する。
300機もの爆撃機の襲来に気付かず、
空襲警報さえ発令させられない。
皇居の消火活動を最優先させたため、
市街地の消火が活動が立ち後れる。
ほとんど無策のまま、
被害が拡大していったのです。

こうしてみたとき、
犠牲になった十万人もの命は、
「敵国の人命を最大限奪おうとした
米軍の合理主義的思考」と、
「自国の人間の命をまったく考えずに、
国体の護持だけを目的とした
日本軍の行動理念」の、
その二つの
非人間的なシステムの狭間で
奪われていったことがよくわかります。

こうした「失敗」が、
戦後70年たった現在に至るまで、
何ら検証されてこなかったこと自体も
驚きです。私たちの国は、
あれから何かが変わったのでしょうか。
不安に感じてなりません。

「東京が燃えた日」が
中学生にぜひ薦めたい一冊なら、
本書は
高校生にぜひ読んで欲しい一冊です。
しかしながら今のところ絶版中。
ぜひ復刊させてほしいと願います。

(2018.10.18)

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