「居場所がほしい」(浅見直輝)①

苦しんでいる子どもとその家族に光明をもたらす

「居場所がほしい」
(浅見直輝)岩波ジュニア新書

文科省の調査報告では、
全国の中学校の
不登校生徒の数は144,522人で、
全体の3.2%にあたる割合に
なっているそうです。
これは、私の勤務する地域の
標準的な規模である
生徒数300人前後の学校であれば、
実に10人が不登校になっている
計算です(私の学校も
そのくらいの割合です)。

私もこれまで30年の教職人生の中で、
何人もの不登校生徒と
接してきました。
しかし、多くの場合、
頑なに心を閉ざしている
ケースが多いのです
(教師に対してだけではなく、
親や同級生に対しても)。
コミュニケーションが成立しても、
本当に伝えたいことを心の奥底に
しまったままの子どももいます。
彼らの本音がどこにあるのか、
周囲はなかなか理解できないのが
現状です。

本書のサブタイトルは
「不登校生だったボクの今」。
かつて不登校を体験した著者が、
その頃を振り返って自分自身の
心の有り様を綴ったものです。
ここには「生きづらさ」を抱えた人間の
本音が書かれてあるように思えます。

家族に対して暴言を吐くなど
つらく当たったこと。
生活の昼夜が逆転して
ゲームに溺れたこと。
自分自身に対するいらだち。
これらは私が接してきた
不登校生徒の何人かにも
見られたことです。
この葛藤が、
苦しさが、
やり切れなさが、
生々しく読み手に伝わってきます。

本書の読みどころの一つが
この部分です。
一番苦しんでいるのは
当事者自身なのだということ。
彼らは助けを求めているというよりも、
寄り添ってほしいと考えていること。
反発しながらも、
周囲の気持ちは
伝わっているのだということ。
こうしたことは、
同じように不登校に陥っている
子どもたちだけでなく、
その保護者や家族の方々にも
大きな参考になると思うのです。

また、不登校に
なったことのない子どもたちも、
周囲にいる不登校の子どもの苦しみを
理解する手がかりになるはずです。

もう一つの読みどころは、
本書の後半部分です。
大学生になった著者は、
自らの体験をもとに、
不登校の子どもやその家族と
積極的に関わりを持とうと
取り組んできたのです。
その「寄り添う活動」の存在自体が、
不登校に苦しんでいる
子どもとその家族に光明を
もたらすのではないかと
思うのです。
どこかに理解してくれる人がいる。
寄り添ってくれる人は必ずいる。
そう信じることこそ
救いに繋がるのだと思います。

不登校から抜け出し、
その経験を武器に活躍している
著者の姿からは、
学ぶべき点が数多く見いだせます。
ぜひ中学生に読んでほしいと思います。

※ただし、
 大人が読むとすれば注意が必要です。
 それについては
 次回書きたいと思います。

(2019.1.21)

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