「ねらわれた学園」(眉村卓)

学園統治の恐怖が、現実社会の暗示のように思える

「ねらわれた学園」(眉村卓)角川文庫

ある日、
おとなしかったはずの少女が
突然、
生徒会の会長選挙に立候補し、
鮮やかに当選してしまった。
だが会長になった少女は、
生徒会を時分の意のままに操り、
魅惑の微笑と恐怖の超能力で
学校を支配しはじめた…。

これこそ学園SFジュブナイルの
王道を行く作品です。
表紙はいくつかバージョンが
ありますが、
なんと言ってもこれです!
薬師丸ひろ子!
これまでTVと映画合わせて
7回も映像化されたとはいえ、
「ねらわれた学園」といえば
薬師丸ひろ子で決まりなのです、
私の世代では。

30年ぶりくらいで
読み返しました。
やっぱり素晴らしいです。
胸がドキドキします。
自分の心が中学生に
戻ったような気がします。
でも大人になってから読むと
視点がやはりちがってきます。
本書に描かれている
学園統治の恐怖が、
現実社会の暗示のように
思えてきてならないのです。

生徒会は
パトロール員制度を導入し、
校内の風紀維持を名目に、
次々と生徒を
取り締まっていきます。
超能力生徒会長の陰謀に、
あるクラスが
敢然と立ち向かっていきます。
リーダーの少年の父親のセリフ。
「やがて、正義の名のもとに、
 いろんなことが
 おこなわれるようになる。
 みんなはそのたびに、
 まあこの程度までは
 しかたがないと一歩ずつ譲歩し、
 あるときはっと気がつくと、
 身動きできなくなっているんだ。
 それが、
 ファッショというものだ。」

日本の社会でも
何度も見かけました。
最近では労働者派遣法改正でしょうか。
1985年に制定された当初は
対象業務を限定していたため、
あまり大きな変化は
感じられませんでした。
それが2004年、
製造業への派遣を解禁、
2015年のの改正では
受け入れ期間が事実上撤廃され、
労働者にとっては
さらに不利なものとなりました。
安保法案もまた、
それと同じようになるのではという
危惧を感じます。

同じく父親のセリフ。
「これは、人間としての、
 生き方の問題だよ。
 おまえたちが正しいと
 考えることを、
 やるべきなんだ。」

平成の危険な世の中を
予見していたかのような
眉村卓の傑作。
昭和50年代に中学生だった
おじさんの貴方にお薦めします。
ノスタルジーに
どっぷり浸れること請け合いです。

※先日紹介した
 筒井康隆の「時をかける少女」と、
 この「ねらわれた学園」。
 映像化と相まって、私の心に
 強く焼き付いている作品です。
 今の中学生は
 どんな印象を持つのでしょうか。

(2019.2.16)

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