「質問する、問い返す」(名古谷隆彦)②

教育とは難しいものです

「質問する、問い返す」(名古谷隆彦)岩波ジュニア新書

前回取り上げた本書、
子どもたちが「主体的に学ぶ」ことの
意味や意義について述べられています。
私も常日頃
子どもたちに訴え続けています。
「やらされる学習」ではなく、
「自ら行う学習」をしていこうと。

ところで、私の住む地域では、
子どもたちに
「主体的な学び」を推進しながら、
教える教師には
「画一的な指導」が要求されています。
板書の仕方や授業の進め方に
共通実践事項という「枠」がはめられ、
誰が教えても同じように、
毎時間同じように、
教えることが求められているのです。
ルーティン・ワークが
推奨されていることに
疑問を感じています。

本書にもあるとおり、
「主体的な学び」とは
子どもたちの意欲を引き出し、
学びの「入口」に子どもたちを
導くことだと私も思います。
その「主体的な学び」が
「主体的でない教え」のもとに
実現されるとは
どうしても思えないのです。

昨今、
高校生棋士・藤井聡太七段の
活躍が報じられています。
相手がどんな戦型で来ようとも
柔軟な思考で手厚く指し、
中盤で優位な情勢を築きながら、
最後はしっかりと寄せきる棋風で
勝ち星を積み重ねています。

彼の在籍校は
名古屋教育大学教育学部附属中学校。
実は私は、
7年前に県外視察で訪問しています。
大学キャンパスに隣接した敷地にあり、
自由な校風のように見えました。
授業を見たかぎり、
授業規律(授業開始時のあいさつや
振る舞い、返事、姿勢等)については
いささか疑問を感じました。
ところが授業の中で
主となる学習活動の部分にさしかかると、
子どもたちが実に生き生きと
動いていたのを記憶しています。
何よりも一人一人が
自ら考えて行動している様子が
うかがえました。
その発言も、
教師の意図に添うように、ではなく、
あくまでも自らの考えを
素直に述べたものがほとんどでした。

私の住む地域では
「画一的な」指導が行き届き、
子どもたちのあいさつや態度は
極めて立派です。
しかし、
教師の意図を
忖度するような発言ばかりです。
見た目はきちんとしているのですが、
本当の意味で
「主体的な学び」になっているとは
言い難いのです。

私の住む地域からは、
将来間違った行動をするような人間は
出にくいのかも知れませんが、
藤井聡太四段のような人間も
出にくいのでしょう。
教育とは難しいものです。

(2019.3.7)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA